テレワーク・インボイス対応…企業のIT利活用はどこまで進んだ?
コロナ禍を機にオンラインのビジネスが増加し、テレワークやクラウド利用が定着する中で、企業におけるIT利活用のあり方が様変わりした。電子契約は本格普及期を迎え、電子帳簿保存法や適格請求書等保存方式(インボイス制度)への対応も進みつつある。日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)とアイ・ティ・アール(ITR、東京都新宿区)がまとめた「企業IT利活用動向調査2023」から現状を読み解く。(編集委員・斎藤実)
日本を含め、既に多くの国が電子署名に関する法律を整備し、電子契約は紙の契約と同等の法的な効力を持つようになった。JIPDECとITRが1月に実施した調査によると、電子契約を「利用している」企業は、前年調査の69・7%から73・9%に拡大。中でも「立会人型と当事者型の両方を採用している」企業の割合が4・3ポイント増となった。
電子契約においてサービス事業者を選定する際に参考にする第三者認証サービスについては「クラウドに関するセキュリティー認証」が44・6%を占め、他の認証サービスに大きく差をつけた。また、電子契約事業者の選定時に重視する要件では「第三者認証・認定の取得」が41・5%に上り、「サービスのコスト」(48・6%)の次に割合が大きかった。
消費税の仕入税額控除の方式として10月から始まるインボイス制度への対応にも注目が集まる。電子インボイスの利用を決定済みの企業は34・3%。これは適格請求書発行事業者として「登録申請書を提出し、既に登録番号の通知を受けている」企業の割合だ。「提出済みで登録処理中」とする31・3%を合わせると、65・6%が提出済みとなった。「今後提出予定」(23・0%)まで含めれば88・6%となる。
インボイス制度は取引先との請求書のやりとりを電子化し、円滑で正確に行うことが目的の一つ。新しい制度に慣れるまでに時間がかかることやシステム対応で混乱が予想されたが、現状は本格運用を見据え、おおむね順調に準備が進んでいる状況が読み取れる。
コロナ禍で定着したテレワークについては、「現在導入している」と回答した企業が前年調査の72・7%から微減して72・1%となった。「全面的に導入中」との回答は14・3%。最多は「出社とテレワークを併用」で4割弱を占めた。
個人情報保護のための企業の取り組みとしては「社員教育」が57・6%で最も多く、次いで「個人情報保護管理体制の構築」(48・6%)と「規程類の整備」(39・7%)の順だった。
調査は国内企業でIT戦略または情報セキュリティー施策に関わる役職者を対象に実施し、1022人の有効回答(1社1人)を得た。