ニュースイッチ

タクシー運賃変動制は新たな需要を開拓するか

タクシー運賃変動制は新たな需要を開拓するか

タクシーイメージ

タクシー運賃に、需給に応じて料金が変動するダイナミックプライシングが5月にも導入される。国土交通省が近く通達改正を出す。配車アプリケーションで事前に料金を確定する場合に限り、上下5割の範囲で変動可能にする。全国のタクシー台数は2006年をピークに減少している。またコロナ禍以降、事業者の売上高は平均4割減少している。柔軟な料金設定を行う事で新たな需要を開拓すると同時に、利用者の利便性向上を図る。

新料金を導入したい事業者が国交省に事前確定型変動運賃の認可申請を行う。需給をみて料金を臨機応変に変えるか、特定の曜日や時間帯のみ変えるかなどは事業者が決められる。利用者は配車アプリで示された料金に合意して利用する。雨天時や終電後、大規模イベントの実施時などは割高に、平日の日中は割安の設定が予想され、これまでタクシーを使わない層も開拓できる。

国交省は事業者による悪質な運用を防ぐため3か月ごとに運賃水準を報告させ、総収入の平均が総括原価方式で算出された運賃の範囲内に収まっているかどうか確認する。水準に収まっていない場合は改善を促し、改善されない場合はこの運賃の認可を取り消すこともあり得る。

ダイナミックプライシングは旅行代金や遊園地、スポーツ観戦などのレジャー業界では古くから導入されておりなじみはある。タクシー業界では長らく、長距離乗客を狙ったタクシーがターミナル駅の乗り場に長蛇の列を作ったり、金曜の深夜にはつかまらなかったりするなど、利用者から不満が指摘されてきた。一方で02年に事業者は免許制から許可制に変わり都市部のタクシーが急増、飽和状態となったため10年には減車政策に転じ10万台以上が減少した。

こうした事態の改善を図るためタクシー業界と国交省は16年から柔軟な料金制度の検討に着手した。これまでに定額制サービス(サブスクリプション)や定額タクシー、配車アプリを使った目的地の近い利用者の相乗りサービスなどを検討、地域特性に応じて導入している。

日刊工業新聞 2023年04月28日

編集部のおすすめ