米中を追う無人自動運転サービス、日本市場拡大へのカギ
特定条件下で運転を完全に自動化する「自動運転レベル4」をめぐって、車両やサービスの開発競争が激しくなっている。先行する米中は既にレベル4相当の無人ロボットタクシーの運行を開始。日本でも4月にレベル4の公道走行が解禁され、運転手のいない自動運転移動サービスが始まる。新制度の下、市場を拡大できるかは官民の連携がカギを握りそうだ。(石川雅基)
「新しい都市でロボタクシーを何カ月でサービスインできるかをアピールするようになってきた」。自動運転に詳しいSOMPOインスティチュート・プラスの新添麻衣主任研究員は米中企業の状況をこう話し、新しい地域で無人自動運転サービスを始めるまでの期間を競う段階まできていると指摘する。
米国で最も進んでいるのは米ゼネラル・モーターズ(GM)傘下のGMクルーズ。2022年6月に営業免許をカリフォルニア州から受け、サンフランシスコ市で一般の人々を乗せた運行を始めた。GMの電気自動車(EV)をベースにした車両を使用し、最高時速30マイル(48キロメートル)で運行している。
同社はホンダなどと6人乗りの自動運転サービス専用車を共同で開発中。ホンダは同車両を使ったサービスを20年代半ばに日本で始めることを目指し、量産モデルの試作車のテスト走行を始めた。ホンダの三部敏宏社長は「事業化できる時代が訪れると確信している。着実に準備を進めたい」と将来を見据える。
中国では22年8月にIT大手の百度(バイドゥ)が初めて無人ロボタクシーの営業許可を地方政府から受けた。百度はまず重慶市、湖北省武漢市で運行を始め、25年までに65都市、30年までに100都市まで拡大する方針だ。同月に中国交通運輸部が自動運転サービス事業者向けの安全指針案を公表。中央政府もサービスの普及に向け、法整備に動き出している。
安全指針案では遠隔監視者の配置や車両の登録、事故時の対応などを示し、旅客輸送については「交通条件が単純で条件を制御しやすい場所での利用を推奨する」と明記。新添主任研究員は「中央政府も慎重に進めている」としつつも「政府が武漢市などで普及に向けた通信インフラの整備にかなり力を入れている」と支援の手厚さを指摘する。
日本では4月1日にレベル4の運行許可制度を盛り込んだ改正道路交通法を施行し、無人自動運転移動サービスを解禁する。27年度までに100カ所以上での展開を目指す。
経済産業省製造産業局自動車課ITS・自動走行推進室の福永茂和室長は「導入しやすい場所から成功事例を作り、それを類型化して示すことで拡大を図る」と方針を話す。ただ、自動運転開発に取り組む日本企業は新興が多く「米中大手のように資金や人材が集まりやすい状況ではない」として「行政の支援が引き続き重要となる」とみる。
富士キメラ総研(東京都中央区)はレベル4以上の自動運転車の世界生産が22年に9万台にとどまるとみるものの、30年に433万台、45年に2051万台まで拡大すると予想。今後、成長する市場を日本企業が取り込む足がかりを築けるか、官民での協力体制が問われることになりそうだ。