タクシー運転手のヒヤリハットを学ぶAI、筑波大が開発
筑波大学の斉藤裕一助教らは、タクシードライバーのヒヤリハットシーンを学んだ人工知能(AI)を開発した。急ブレーキを踏んだ前後のドライブレコーダーの映像と車速などを学習させた。危ない運転をしている際の状況判断のようなものをAIとして抽象化できた。運転時の思考を解釈したり、そこから安全マージンを導くなどの研究につなげる。
タクシードライバーは運転のプロとして、隠れたハザード(危険)を勘案しながら走行する。ドラレコのヒヤリハットデータ20万超の中から、制限速度30キロメートル以下で物陰の多い交差点での自転車の飛び出しシーンを抽出する。自転車に接触しかけた際の時間的な猶予を計算し、安全マージンの大きな運転と小さな運転を学習させた。
安全マージンの大きな運転データを学んだAIは基準となる車速が時速10・61キロメートルと遅く、ここから周囲の状況に応じて速度を上げるように判断していた。安全マージンの小さな運転データを学んだAIは基準は時速29・68キロメートルと速く、停止車両や走行レーンなどの周囲の状況に応じて速度を抑えていた。こうした説明変数の項目や加減速の具合が数値化され、運転の状況判断が解釈しやすくなった。
ここから推奨速度を求めたり、その根拠を説明できると運転手が納得して運転できる可能性がある。
AIで事故を回避することは難しいが、事故の重大さを下げるような運転を提案したり、トレーニングに利用できる。その際に説明可能性が重要になっていた。
日刊工業新聞2022年10月12日