NTT東日本が異業種協業で挑む「睡眠改善」、収益化なるか
NTT東日本が他社を巻き込み、睡眠に関する課題の解決を目指している。異業種の企業が参画するコミュニティー「ZAKONE(ザコネ)」を開設。睡眠改善の商品・サービス開発に関心がある企業同士をつなぎ、協業を促進する。同社が手がけてきた情報通信技術(ICT)は、顧客ニーズの把握や睡眠改善の効果測定に当たっての武器になる。一連の施策の実効性を高め、睡眠改善事業の収益化につなげられるか試される。(張谷京子)
NTT東と傘下のNTT DXパートナー(東京都新宿区)は、ICTで睡眠の質を改善する「スリープテック」事業を手がける。ZAKONEは同事業の一環として、2022年9月に開設した。参画企業は45社以上。エステーや第一生命保険、長谷工コーポレーション、ネスレ日本(神戸市中央区)など、業種は多岐にわたる。参画企業同士が情報交換を行うほか、共同で睡眠関連の商品・サービスを開発したり、イベントを開催したりしている。
3月18日の「睡眠の日」には、神奈川県箱根町の吉池旅館で宿泊型睡眠ライブイベント「寝落ちするための演奏会」を開催。アーティストが、洋楽のヒット曲を“ささやき声”でアレンジカバーした曲を披露した。NTT東の担当者は「眠り自体をエンターテインメント化することが今の睡眠市場に必要。良い睡眠の先にある新たな提供価値を実現していかないと、市場が盛り上がっていかない」と同イベントの意義を語った。
ただ、コミュニティー活動で睡眠市場活性化を促すだけではNTT東の利益にはつながらない。同社が将来的なサービスとして視野に入れるのが、睡眠プラットフォーム(基盤)だ。個人の睡眠データを同基盤に蓄積し、その悩みに応じて各企業の睡眠に効果的なサービス・製品を紹介することを想定する。
NTT東はICTの活用により、睡眠改善関連製品・サービスの具体的な効果を測定することが可能。加えて既存事業で培ってきた、自治体や企業との幅広い顧客を持つ。これらを生かすことで、睡眠基盤ビジネスの創出につなげたい考えだ。NTT DXパートナーの担当者は「短期的に利益のことだけを考えるのであれば、寝具をつくるのが一番だ。だが、わざわざ当社が新たに始める意味は薄い。中長期な視点で市場を作っていく」と展望を語る。
睡眠改善サービスはいまだ黎明(れいめい)期。日本における睡眠関連の市場規模は現在約1兆円だが、潜在的には3兆―5兆円あると言われている。そこでNTT東は、まず市場の活性化に重点を置く。
同社のスリープテック事業では、ZAKONEのほかにも、睡眠事業への新規参入を支援するコンサルティングやソリューション提供などを展開。28年度に売上高を2ケタ億円後半から3ケタ億円にすることを目指す。22年度見通しは1ケタ億円という。