障害発生・市場鈍化…NTTが迎えた「光回線」の正念場
NTTが光回線事業で正念場を迎えている。2023年度末の光回線サービスの契約数は2397万件の計画で、22年度の目標とほぼ変わらない。テレワーク特需の一巡や少子化などが影響しているとみられる。家庭用光ファイバー通信回線(FTTH)市場は鈍化しており、他事業者との競争も激しい。3日にはNTT東日本とNTT西日本で大規模通信障害が発生。障害対策も含め、NTTは難しいかじ取りを迫られそうだ。(張谷京子)
総務省がこのほど認可したNTTの23年度の事業計画によると、光回線サービス「フレッツ光」および「コラボ光」の契約数は2397万件の見通し。22年度計画値比で5万件増にとどまる。19―22年度は契約数の計画値が毎年約60万―80万件増加していたことを踏まえると、伸び幅は小さいといえる。
もっとも、22年度の契約数は計画未達の可能性が高い。NTTは22年度通期の契約純増数で65万件を目指していたが、22年12月末時点で29万2000件にとどまる。要因はFTTH市場の鈍化だ。コロナ禍におけるテレワーク需要の拡大に伴って20―21年度は市場が好調だったものの、22年度に入って勢いは減速。23年度以降も同市場はテレワーク特需の反動減が続く可能性があるほか、少子高齢化などで中長期の見通しも明るくない。
NTTはFTTH市場でのシェアも低下傾向にある。総務省の統計によると、NTT東西のシェアは、22年3月で17年3月比4・8ポイント減の63・3%だった。直近の22年12月でも62・3%と、22年3月比で1・0ポイント減少している。NTT東西はシェア首位の座を当分は維持できるとみられるものの、市場の停滞とシェアの低下はダブルパンチで痛手となる。
今後は光回線サービスの障害対策も急務だ。NTT東西では、3日にフレッツ光で障害が発生。設備の故障が原因で、両社合計で最大44万6000件に影響が及んだ。復旧までにNTT東は2時間58分、NTT西は1時間39分かかった。松本剛明総務相は一連の事態について「甚だ遺憾。両社ともに重大な事故に該当する可能性が高い」と述べ、詳細な報告を求めた。
NTT西では22年8月にも障害が発生している。最大約211万件の光回線サービスが利用しづらくなるなどの影響が出た。3日の障害について同社の桂一詞執行役員は「(22年8月の障害の)反省を踏まえて、いろいろな取り組みをしてきた。いち早く対外的に公表できた」と話す。利用者への周知・広報に改善傾向が見られた点は評価できるものの、1年間で2度の大規模障害を起こした責任は小さくない。
NTT東西は光回線事業の成長鈍化を見据え、農業やエネルギーといった“非回線事業”の売上高拡大に取り組んでいる。ただ、両社の根幹は安定的な通信サービスの提供に他ならない。中長期の成長に向けた事業構造の転換を急ぎつつ、障害対策の強化も必要になる。