自動運転「センサー技術」で先導するヴァレオのAI活用法
フランスのヴァレオは自動車向けアプリケーションに特化した研究センター「Valeo.ai」で人工知能(AI)関連の開発を強化している。
30年にわたり超音波センサーやカメラ、高機能センサー「LiDAR(ライダー)」など、さまざまなセンサーを開発・製造しており、先進運転支援システム(ADAS)関連技術をリードしてきた。これらを組み合わせ、歩行者などの動き予測や計算負荷を低減する技術を開発。自動運転の実用化に貢献する。
高速道路のような比較的単純な状況下での自動運転は実現可能性が高いが、歩行者や自転車など複雑な動きが多い市街地での自動運転はハードルが高い。ヴァレオの技術「Move Predict.aiシステム」は最新世代の魚眼カメラとLiDAR、AIを組み合わせ、車両周辺の360度を認識。車両の近くの歩行者などを検出し、その動きの意図を予測する。
ヴァレオジャパン コンフォート&ドライビングアシスタンスシステムズの伊藤善仁R&Dディレクターは「都市部は子どもが急に飛び出してきたり、信号無視をする歩行者がいたり、予想外の動きが多く、予測技術は非常に重要」と話す。
例えば、歩行者が携帯電話を使用していれば通常とは異なる動きをするかもしれないと判断する。車両周辺の状況や対象者の行動などを詳細に分析し、意図や軌道を予測する。潜在的なリスクをドライバーに警告し、緊急ブレーキを作動させるといった応用ができるという。
AIの膨大な画像処理は小型の車載電子制御ユニット(ECU)にとって負荷が大きい。仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)と共同開発したAI技術「DeepManta」は、計算量の増加に伴う電力消費や熱の発生といった課題を解消できることが特徴。
同技術では車両や歩行者の画像をフルで処理するのではなく、特徴点を捉えた3次元(3D)情報から対象物の距離や姿勢を予測。計算の負荷を大幅に減らし、省エネルギー化や発熱の低減など大きなメリットを見込む。
同社は1991年に後退レーダー用超音波センサーの量産を始めた。これを皮切りにセンサーのラインアップを拡大。LiDARをいち早く量産化するなど自動運転を先導する。
今後、Valeo.aiでは対象物の認識技術を向上させると同時に、人間のような解釈ができる高度なAIを目指す。(増田晴香)
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