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豪雨予測精度向上へ、「線状降水帯」水蒸気の起源が明らかに

九州大学大学院の李肖陽助教と川村隆一教授らは熊本大学、東京大学と共同で、豪雨災害につながる線状降水帯の水蒸気の起源と履歴の解明に成功した。水の同位体比を用いたシミュレーションにより、2020年7月に熊本県などに大きな被害をもたらした線状降水帯を再現した。線状降水帯の予測精度を高めるには、上流側の大陸上の水循環過程の把握が重要と示された。線状降水帯の降水量予測などの精度向上につながると期待される。

20年の熊本豪雨を対象に、水蒸気の起源が得られる水の同位体分別の過程を組み込んだ同位体領域気象モデル(IsoRSM)で高解像度シミュレーションを行った。

その結果、熊本豪雨の線状降水帯は主に、湿潤なアジアモンスーン地域から自由大気経由で流入した水蒸気と、太平洋高気圧の西縁に沿って大気境界経由で流入した水蒸気の凝結によって形成・維持されていることが分かった。

全体の凝結量のうち、アジアモンスーン起源が約57%、太平洋高気圧起源が約32%を占め、近海起源は10%未満と少なかった。

日刊工業新聞 2023年03月23日

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