九大などが開発、水素脆化を防ぐスゴい高強度アルミ合金
九州大学の戸田裕之主幹教授とワン・ヤフェイ特任助教、岩手大学の清水一行助教らは、水素脆化を防ぐ高強度アルミニウム合金を開発した。ナノサイズ(ナノは10億分の1)の微粒子を析出させて水素を吸蔵させる。強度を維持したまま水素脆化を6割減らせた。輸送機器の軽量化や信頼性向上につながる。アルミ合金では亜鉛マグネシウムのナノ粒子を分散させて強度を向上させる。このナノ粒子の界面に水素が吸着して剝離させ水素脆化を引き起こす。強度と対水素信頼性を両立できなかった。
そこでアルミ亜鉛マグネシウムのナノ粒子を析出させた。この粒子は内部に水素を取り込み、亜鉛マグネシウム粒子の数百倍の容量がある。二つのナノ粒子を析出させると亜鉛マグネシウムに含まれる水素を1000分の1に減らせた。強度を維持したまま粘りが38%増加し、水素脆化は60%抑えられた。
製造時は添加する亜鉛マグネシウムの比を調整し、時効処理を120度Cから150度Cに上げるだけとプロセスの変更が少ない。アルミ合金の適用拡大で輸送機器の軽量化や省エネ化につなげる。
日刊工業新聞 2022年11月22日