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収入を全額保障…政府「産後パパ育休」制度の効果は?

岸田文雄首相は男性の育児休業を後押しする「産後パパ育休」制度について、給付金の増額や休業取得率の目標の大幅な引き上げを表明した。若い世代の収入減を防ぎ、男性の育休取得を後押しする狙いだ。一定の効果は見込めるものの、女性のキャリア形成の促進など働き方の視点からの環境整備も必要で、効果は未知数だ。(幕井梅芳)

産後パパ育休制度と育休制度

産後パパ育休は、子どもの出生後8週間以内に男性が育休とは別に4週間まで仕事を休める制度。男性の育休取得を促すため2022年10月に始まった。

ただ休業中に受け取れる給付金の水準は、休業前の賃金の67%。厚生労働省によると、男性が育休を取得しなかった理由では「収入を減らしたくなかった」が41・4%で最も多く、取得率向上の大きな壁になっている。

政府が検討する少子化対策では、この給付金の水準を80%程度まで引き上げる。給付金が非課税なのに加えて、育休中は社会保険料も免除されることから、実質的に休業前と同水準の収入が確保できることになる。

男性の育児休業取得率は右肩上がりの傾向にあるものの、21年度は前年度比1ポイント強の13・97%と、欧米主要国と比べて低水準にとどまっている。岸田首相は「政府目標を大幅に引き上げて25年度に50%、30年度に85%とする」と表明した。しかし、現在の「25年までに30%」という目標の達成すら難しいのが実情だ。

こうした政府の対策は、収入面の不安を払拭(ふっしょく)できる点で、一定の効果が見込める。一方で、ニッセイ基礎研究所の乾愛研究員は「女性が働きやすい制度やキャリアパス制度の見直しも不可欠」と指摘する。

育児は出産直後だけでなく、数年は続く。男性が育休を取得したとしても、幼い子の子育ては女性のワンオペに委ねられているのが現状だ。加えて、女性が妊娠・出産後に職場復帰するのも難しい。

こうした状況を踏まえて、企業にはよりきめ細かい育児休業制度や女性のキャリアパスを阻害しない人事制度の構築が求められる。政府による好事例の公表や導入企業に対する助成拡充なども有効となりそうだ。男女ともに育児と仕事を両立しやすい環境の整備に一層力を入れていくことが欠かせない。

日刊工業新聞 2023年3月23日

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