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事業構造大きく変わる、三井化学「ライフ&ヘルス部門」変革の道筋

三井化学は2030年度に、人々の健康や生活に関わるライフ&ヘルスケア・ソリューション部門を全社で最大のコア営業利益900億円(22年度見通し比3・0倍)を稼ぐ中核領域へ変革する。従来の素材を中心とする事業構造から大きく変わる挑戦的なものだ。

同部門は、メガネレンズ材料や農薬など昔から強い事業があり、景気減速時も収益が比較的に安定していることが魅力だ。同社全体の30年度の同利益目標は2500億円(同92・3%増)。ライフ&ヘルスと並んで成長事業とするモビリティーは同56・9%増、ICT(情報通信技術)は同2・6倍の大幅な利益成長を目指す。

21年度以降のM&Aや資本提携、提携解消、設備投資などの発表28件のうち、ライフ&ヘルス部門に関連するものは10件にのぼる。構造改革と資源循環対応を急ぐ石化製品などのベーシック&グリーン・マテリアルズ部門と同じ件数で、ライフ&ヘルス部門への注力ぶりは明らかだ。

特に25年度頃までの収益成長の中心となる農薬やメガネレンズ材料関連、歯科材料はM&Aが盛んだ。農薬は22年に国内の同業の事業を400億円規模で買収した。メガネレンズ関連は、複数のM&Aで世界屈指のコーティング材料の品ぞろえを構築するなどで、競争力を高めた。また、成長事業も事業構造改革を進める。マスクやおむつなどの材料に使われる不織布事業は、旭化成との事業統合を決め、安定的に収益を稼ぐ体質へ変革する。

約10年をかけた基礎化学関連の構造改革は安定収益に結びつき、自社単独で実行する部分は終わりが見えてきた。今後は、ライフ&ヘルス部門などの成長戦略をやり切ることが最も重要となる。


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日刊工業新聞 2023年02月16日

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