若手は1年“他流試合”、双日の経営人材育成術
双日は若手社員の経営人材としての成長を早めるため、本社以外の業務を経験させる「トレーニー制度」を導入している。入社10年目までの社員が対象で、2―5年目を中心に本社以外の海外を含めた拠点や事業会社、駐在員事務所に配属する。基本的に1年間にわたり、「他流試合で鍛えられる」(人事部グローバル・人材育成課の田中泰生課長)。
現場経験を積むメリットは「どのように経営が成り立っているかを理解できる」(田中課長)ことが大きい。ただ、1年間と時間が限られていることから、育成計画に基づき、随時、達成度を振り返り、PDCA(計画・実施・評価・改善)サイクルを回し続ける。
指導もトレーナーに任せ切りにせず、本社や所属する本部もサポートするなど「みんなで育成する」(田中課長)。そして本社に戻り、自らの学びを組織に還元する。
海外に配属されるケースが多く、1年間の海外トレーニー派遣制度利用者は2018年度に7人だったが、21年度には29人と4倍以上に増えた。ただ、本部の人材育成方針に加え、本人の希望を重視し、配属先を決める。女性の場合、妊娠などのライフイベントの前に同制度を適用するようにしている。
これが女性総合職の本社以外の業務経験比率を高めており、同制度以外を含めて21年度に34%を達成し、23年度に40%を目指す。
本社以外にさまざまな現場での業務を経験させ、多様な人材育成につなげる。19年からは所属する本部が管轄する以外の拠点などに配属する取り組みを始めた。これまでの総合商社は縦割りだったが、本部間の連携を促すため、同制度で組織に横串を刺す。
田中課長は「経営と人事、現場でしっかり対話し、長期的に人材を育てている」と強調する。現在、本人と本部の意向とともに、グループ全体の経営戦略を踏まえ、戦略事業・地域に対して重点的に配属するプランを検討しており、同制度を進化させる。