在来線66線区のうち47線区に拡大、JR東日本の「ワンマン運転」支えるシステムの全容
JR東日本が車掌を乗せず、運転士だけの「ワンマン運転」の線区を拡大している。18日のダイヤ改正で新たに青梅線(東京都)の一部の区間に導入し、在来線66線区のうち47線区でワンマン運転を実施する。さらに2025―30年にかけて山手線など首都圏の主要線区にも拡大する。併せてワンマン運転用の訓練用シミュレーターの導入も増やすなど、将来的な人手不足が懸念される中、ワンマン運転への対応を急いでいる。
「さまざまなバージョンアップをしながら日々訓練し、安全レベルをさらに上げている」―。JR東の深沢祐二社長は乗務員訓練シミュレーターなどの導入意義をこう語る。 同社は訓練シミュレーターの導入を16年度から開始し、19年度に全乗務員区所に導入を終えた。乗務する線区の実際の映像や走行音を使い、臨場感のあるつくりが特徴だ。「試運転の列車を走らせ、それぞれの線区映像を撮影している」(同社)という。実車での訓練では難しい駆け込み乗車や線路内の立ち入りなどの訓練ができるほか、車両事故の発生を模擬し、応急処置の訓練も行う。
一方、新たにワンマン運転を実施する線区では、実際の作業に合わせて訓練シミュレーターに改造を施した。同社の立川運転区(東京都立川市)で報道公開されたワンマン運転用の訓練シミュレーターには、上部に乗降確認用のモニター画面を追加した
各駅のホーム上の風景や人をコンピューターグラフィックス(CG)で再現し、運転手が座ったまま乗客の乗り降りを車体側面に設置したカメラで取得した映像から確認する作業を模している。また、ワンマン用ドアの開閉スイッチのほか、発車メロディーの鳴動ボタンも追加した。
鉄道事業本部モビリティ・サービス部門の出口智彦ユニットリーダーは、「従来の(車掌も同乗する)ツーマンで乗る際は発車時にドアを閉める動作はなかったが、(ワンマン運転で)お客さまの情報を確認して閉める動作が加わった。そこが1番大きな変換点」と指摘する。
また、22年3月からワンマン運転を始めた八高・川越線(東京都八王子市―埼玉県川越市)では、車掌が実施していた時刻や行き先、発車番線の案内放送をタブレット端末の全地球測位システム(GPS)機能と時計機能を活用して自動で実施するアプリを開発、導入している。
同社は30年までに利用者数の少ない線区に加え、山手線や京浜東北根岸線、横浜線など首都圏の主要線区でもワンマン運転を拡大する計画。将来的には自動列車運転装置(ATO)などを活用し、運転士が乗務しない「ドライバーレス運転」の導入にも意欲的だ。
これら技術力を活用してワンマンやドライバーレス運転を進め、将来の人手不足を乗り越えるとともに、働き方改革を推進。併せて人員を新規事業などに充てるなど、経営の効率化を図る。