地下新駅3月開業・31年には大阪市に新線…関西「交通インフラ」の将来像
関西の鉄道会社や空港会社などが、2025年の大阪・関西万博を大きな弾みにし、交流人口の増加を見込んだ交通ネットワーク拡大を進めている。JR西日本は3月18日、大阪駅北側の再開発エリア「うめきた2期」で地下新駅を開業する。31年には大阪市内で新線「なにわ筋線」が開業し、将来的にリニア中央新幹線や北陸新幹線の大阪開業も計画される。鉄道網に加え、30年代には関西3空港の発着枠拡大も検討される。関西の交通インフラの将来像を追った。(大阪・市川哲寛)
JR西のうめきたエリアの新駅には従来、大阪駅に停車しなかった関西国際空港方面や和歌山方面の特急が停車しアクセスが向上する。そして31年に同駅から大阪市内を南北に貫く「なにわ筋線」や、阪急電鉄が十三駅経由で新幹線停車駅の新大阪駅を結ぶ連絡線も開業する予定だ。
なにわ筋線はJR西日本と南海電気鉄道が運行し、大阪メトロの御堂筋線などと並ぶ南北ルートを拡充、関空への利便性を高める。JR西日本では「関西都市圏を活性化する新線の建設で、まちづくりに貢献していく」(大阪工事事務所なにわ筋線担当課)と意気込む。
大阪府・市が誘致を目指す統合型リゾート施設(IR)が実現するかが、関西の交通網にも影響する。京阪電気鉄道はIR誘致が決まれば、中之島線をJRと阪神電気鉄道が乗り入れる西九条駅への延伸を進める方針だ。実現すれば、なにわ筋線の途中駅で京阪も接続する。京阪ホールディングスの石丸昌宏社長は「なにわ筋線が開通すれば、さらに乗客の勢いが増す」と強調する。テーマパーク「ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)」とのアクセス向上も図れると見る。
大阪モノレールも交通網の充実を図る。約1000億円を投じて、大阪府門真市の門真市駅から南へ約9キロメートル延伸する。29年開業予定で、途中駅や終点の瓜生堂駅で大阪メトロやJR、近畿日本鉄道と接続する。
関西空港 国際化見据え発着枠3割増
万博後を見据えて発着回数を成田空港と同等規模への拡大を目指す関西国際空港(関西エアポート提供)
コロナ禍からインバウンド(訪日外国人)回復が期待される中、空港のネットワークも重要だ。関空と大阪国際空港(伊丹空港)、神戸空港の関西3空港の役割を関西の財界や自治体らで議論する「関西3空港懇談会」は22年9月、大きな決断をした。
30年ごろに神戸空港で国際線定期便就航を目指し、30年代前半めどに3空港の発着回数上限を従来比3割増の計約50万回とする方針を定めた。発着枠50万回になれば、国内最大の羽田空港に肩を並べる。うち関空は万博までに発着枠を成田空港と同等の30万回に引き上げを狙う。
交通ネットワークの整備は多くの関係者が関わるだけに一筋縄でいかない場合もある。なにわ筋線では約3300億円とされる事業費負担や、営業権を巡りJR西日本と南海の交渉が難航するなど、長年にわたり計画が進展しない時期があった。神戸空港の国際化も今後、関空側の地元自治体の理解が必要になりそうだ。大阪府では「関空強化が関西の成長につながる」とし、関空ファーストの姿勢を改めて強調する。
万博は約半年間のイベントだが、IRが誘致できれば長期スパンで交流人口増が期待できる。関西経済連合会の松本正義会長は「オール関西で経済活性化を図る」とするが、改めて関西が一丸となった交通インフラ整備が必要となる。