福島第一原発 デブリ取り出し、日本原子力研究開発機構福島研究開発部門所長に聞く
東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向け、燃料デブリの取り出しがいよいよ始まる。高レベル放射性物質の処理の最難関領域だ。日本原子力研究開発機構(JAEA)は3カ所の研究センターを福島県内に整備。放射性物質の分析や処理、遠隔計測技術の開発などを進めている。福島研究開発部門(福島県いわき市)の宮本泰明所長に廃炉に関する今後の取り組みを聞いた。
―三つの研究センターの活動は。
「廃炉作業に必要な技術の研究・開発で廃炉作業の支援する役割を担っている。『楢葉遠隔技術開発センター』は遠隔技術の大型実証拠点で、模擬環境下でロボットなどの機器の実証が可能だ。現在、国際廃炉研究開発機構がロボットアームによる燃料デブリの試験的取り出しに向けた実証試験を進めている。施設利用は2016年の38件が、22年には100件以上に増えた。廃炉以外の技術実証施設としても、ロボット業界から関心を集めている」
―最難関の燃料デブリ、高放射線固体廃棄物処理が始まります。
「大熊分析・研究センターで分析を開始する。22年、放射性物質の分析・研究施設第1棟(9700平方メートル)が完成し、管理区域を設定した。がれきや焼却灰、汚染水の処理で発生する2次廃棄物の低・中線量放射線分析をヒュームフード、グローブボックス、鉄セルで行う。多核種除去設備(ALPS)による処理水の海洋放出が始まるが、1棟では第3者としての分析も実施する」
「新設する第2棟(3300平方メートル)では燃料デブリなどを分析し、保管や処理、処分の技術情報を提供する。原発事故で発生した燃料デブリの処理・処分は世界初で、茨城県の研究施設と共同で分析する。取り出しは東電が2号機から始めるが、臨界が起きないよう管理して進めるため、分析などを通し貢献する」
―廃炉への新しいフェーズに入ります。
「燃料デブリは東電がロボットで取り出すが、どのように炉心が壊れて燃料デブリとなったかの分析や、効率的なデブリの取り出しに必要な技術、安全な保管に関する情報提供は我々の役割として貢献していく」
【記者の目/これからが役割の本番】
JAEAは原発事故発生の翌日から現地入りし、環境回復に貢献。廃炉に向けた研究開発で東電を支援。さらに最難関で世界初の燃料デブリの安定した取り出しを強力にサポートする。かすんでいる頂上に向かう登山隊のシェルパ(案内人)として、これからが果たすべき役割の本番だ。(いわき・駒橋徐)