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国産量子コンピューター初号機、今後の精度向上へ重要なこと

理化学研究所量子コンピュータ研究センターの中村泰信センター長(写真)は9日、国産量子コンピューター初号機の公開を前に会見を開き、産学での連携を広げる姿勢を表明した。初号機は3月末にクラウドサービスとして提供を始める。まずは共同研究の形態をとる。開発現場を人材育成の場とするために出向者も受け入れる方針。ハードウエアとソフトウエア、用途開発、人材育成を一体的に進める。

国産初号機は超電導方式の量子ビットを64個並べて量子もつれを起こす。量子もつれを利用して通常のコンピューターでは不得意な計算を高速に解く。2号機の開発も着手しており、初号機の方式を拡大させる。100量子ビットや144量子ビットを想定する。

国産機はハードとソフトに直接手を加えて研究できる。海外製品はメーカーに実機を任せるため研究に制約があった。日本として実機を持つことでユーザーと用途開発できる。

量子コンピューターの性能を上げるには量子ビットの数と質が重要になる。数の面では量子ビットを操作する配線が密集する問題があった。そこで量子ビット素子の裏から配線する技術を開発した。最大で1000量子ビットを一つのチップに集積できる。

質の面では量子ビット操作の忠実度を高め、エラーを1%に抑えた。さらなる精度向上にスパコン「富岳」などでの量子コンピューターのシミュレーションが重要になる。中村センター長は「量子コンピューターとスパコンを結ぶ役割を果たしたい。国産機を研究活性化の起爆剤にしたい」と力を込めた。

日刊工業新聞 2023年03月10日

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