脆弱化指摘の防衛産業、防衛省が基盤強化へ一手
10月の法案施行目指す
防衛省は「防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律案」の今国会での成立と10月からの施行を目指す。同法は事業承継の失敗や撤退などで防衛産業が年々脆弱化しているとの指摘を踏まえ、サプライチェーン(供給網)の強靱(きょうじん)化やサイバーセキュリティー対策の費用の直接的な支払い、国による重要施設の一時国有化などの措置を盛り込んだ。固定費などの負担を軽減しつつ国内産業基盤の維持を図る。
同省の担当者は「厳しい事業環境で撤退企業も数多く出て、自衛隊の活動や部品供給にも影響が出ている」と明かす。同法には基盤強化措置としてサプライチェーン強化、製造工程効率化、サイバーセキュリティー強化、事業承継などに応じて必要経費を直接支払う措置を規定した。
サプライチェーン強化は、輸入に頼っていた部品を国産に切り替えることや、輸出禁止や海峡封鎖といった輸入途絶事態に備えて多めに部品を手当てする場合などを指す。製造工程効率化は、使用開始から30年以上経過し老朽化した工場設備が多く、新型機械や人工知能(AI)、3Dプリンターなど先端設備を購入する場合などを念頭に置く。
製造施設の国による保有は、他に装備品を手がける企業がなく、さまざまな支援措置を講じても事業が立ちゆかなくなった場合に国が製造施設を保有し、企業に運営・管理させることで固定費負担の削減を図ることを目的とする。米国や韓国にも同様の事例があるという。
企業側のモラルハザードが生じないように期間5年などの時限措置を設ける考えだ。
日刊工業新聞 2023年03月08日