「防衛力整備に“穴”が開く事態を食い止めたい」防衛省、事業承継支援で新制度
防衛省は防衛産業から撤退する企業の円滑な事業承継を支援する新制度を2023年度に創設する。潜水艦のスクリュー部品加工など特殊技術が必要とされる事業で、撤退により部品調達に支障があると判断した場合、新企業が金型や製造機械、図面を引き取ることや、技術者を移籍させるなど承継に必要な費用を補助する。防衛産業からの企業の撤退が相次ぐ中、関連法の整備も含め早期に運用を開始し、「防衛力整備に“穴”が開く事態を食い止めたい」(防衛省)考えだ。
潜水艦やステルス戦闘機をはじめとする防衛装備品は敵の探知を防ぐための熱処理や合金、複合材技術、耐熱処理などの特殊技術が必要とされる。汎用に見えるネジや鋼板などのパーツも高度なノウハウの塊であることが多い。
こうした企業は大手企業の下請けのケースが多く、従業員の高齢化や低収益構造を背景に防衛産業からの撤退を検討する会社が増えている。他の企業に事業を承継できなければ部品調達に穴が生じ、「外国製部品に頼らざるを得ない事態が生じる」(同)。円滑な事業承継を後押しすることによって、こうした事態を防止する。
支援制度の設計では費用支援が単なる中小企業援助にならないように、審査の内容に重点を置く。撤退予定企業A社から別の企業B社に承継する場合「A社の製品や技術が他社では代替が不可能かどうか、B社以外にコストが低いC社やD社に承継する別の方法がないかなどに関して公正に審査する」(同)考え。
今後、金額の上限や審査基準などを早急に詰める。
日刊工業新聞 2023年01月16日