KDDIは1000億円投資…メタバース加速する携帯各社が問われること
大手携帯通信事業者がメタバース(仮想空間)関連サービスの展開を加速している。KDDIは7日、今後3年間でメタバース事業に1000億円以上を投じることを明らかにした。ソフトバンクも韓国企業のメタバースプラットフォーム(基盤)などを活用した新しい取り組みを始めた。ただ、メタバース市場はいまだ黎明期。携帯各社は培ってきた顧客基盤を生かし、多様な業種の企業・団体を巻き込んで同市場を活性化できるかが問われる。(張谷京子)
KDDIは7日、メタバース・次世代インターネット技術「ウェブ3・0」のサービス「αU(アルファユー)」を始動した。メタバース、ライブ配信、バーチャルショッピングなどを提供。現実と仮想の世界の境界線をなくし、音楽ライブやアート鑑賞、友人との会話やショッピングなどの日常体験を、いつでもどこでも楽しめるようにする。今後3年間累計の投資額・売上高はそれぞれ1000億円以上を予定する。
新サービスの世界展開も見据える。高橋誠社長は「メタバースではボーダーレスで、グローバルな世界をつくっていくべき。グローバルを舞台にする時に、パートナーとの提携は必要だ」と認識。以前から得意としている、他企業との提携によるビジネス拡大を今回も追求する。米グーグル傘下のグーグル・クラウド・ジャパン(東京都港区)や英広告大手WPPなど複数社と提携し、日本のクリエーターやコンテンツの海外展開を支援していく。
ソフトバンクもメタバース事業を拡充する。韓国のZEP(ゼップ)が手がけるメタバースプラットフォーム「ゼップ」など、複数の関連サービスを活用。企業や自治体が同基盤上でイベントを開催したり、出店したりできるように支援する。
メタバースと一口に言っても、活用したい企業・自治体側のニーズは多岐にわたる。ソフトバンクは「実世界と仮想世界の相互送客を行う空間を構築する」(原田賢悟サービス企画本部長)など、需要に応じて柔軟に複数のメタバース関連商材を組み合わせてサービスを展開することで、幅広い需要の取り込みを狙う。
NTTドコモは、2022年10月に事業を始めた子会社のNTTコノキュー(東京都千代田区)を中核にしてメタバース市場に攻勢をかける。当初資産600億円の大半を開発費に投じ、個人・法人向けにメタバースサービスを展開。軽量グラスなど、仮想現実(VR)/拡張現実(AR)用のデバイスも開発する。
ただ、こうした携帯通信各社のメタバース事業が成功するかは不透明だ。先行する米メタ(旧フェイスブック)も開発費の増大で採算性悪化に苦しんでおり、現時点のメタバース市場において勝ちパターンは確立されていない。
一方、携帯各社が持つ幅広い顧客基盤や第5世代通信(5G)などはメタバース事業を展開していく上で大きな武器となる。まずは多様な企業・団体を巻き込み、いかにメタバース市場を広げていけるかが問われそうだ。