スペースXが日本で「スターリンク」開始、「ライバルよりも有利な状況」の理由
米スペースXは衛星ブロードバンドインターネット「スターリンク」の日本でのサービスを始めた。山間部や自然災害時にも高速インターネットに接続でき、航空機や船舶、衛星携帯電話での利用も期待される。(藤元正)
スターリンクは現在までに44カ国・地域でスターリンクの導入が進み、日本での法人・自治体向けサービスはKDDIが提供する。スペースXに出資する米ベンチャーキャピタル(VC)、ペガサス・テック・ベンチャーズのアニス・ウッザマン最高経営責任者(CEO)によれば、スターリンクはアジアでは日本に続き第4四半期にフィリピン、2023年第1四半期に韓国で事業開始の見通し。インドでも国内インテグレーターが承認作業を進めている。
ただ中国では「中国政府が上海にテスラの工場を持つイーロン・マスクCEOに対してスターリンクを販売しないによう要請し、マスク氏もそれを受け入れた」(ウッザマン氏)ため、導入は難しいようだ。
12年にマスク氏が設立したスペースXは中国・バイトダンスに続いて世界第2位のユニコーン(評価額10億ドル以上の非上場企業)。8月時点での評価額は1270億ドル(約18兆7000億円)。今年半ばまでに31回、累計約100億ドルを調達。ペガサス・テックはスターリンクとの連携を目的に日本企業からの出資分を含め計200億円以上を出資する。
資金調達に向けてスペースX自体の新規株式公開(IPO)も想定されるが、「あまりに巨大なため、上場しにくい」(同)事情もある。ウッザマン氏は「25年か26年にスターリンクを分割上場すると業界ではみられている」という。計1万2000基のコンステレーション衛星の100億ドルにも上る打ち上げ費用を捻出する方針のようだ。23年もシリーズRの資金調達ラウンドが実施予定という。
産業向けにスターリンクの契約を結ぶところも出てきており、米国のハワイアン航空やデルタ航空などが機内インターネットサービスとして導入予定。船舶ではロイヤル・カリビアンがクルーズ船用に契約した。ペガサス・テックにも日本企業を含め、スターリンク導入に向けた依頼が寄せられているという。
一方、ライバルはソフトバンクグループが出資する英ワンウェブや、楽天が出資する米ASTスペースモバイル、米アマゾンの「プロジェクト・カイパー」など。とはいえ衛星打ち上げでのコスト優位性からワンウェブ、ASTともにスペースXと契約を結ぶ。そのためウッザマン氏は「資金調達力や衛星打ち上げの面からも、スペースXが有利な状況にある」としている。