ニュースイッチ

バイオメタノール船を実証する商船三井、役員が指摘する海の脱炭素で大切なこと

バイオメタノール船を実証する商船三井、役員が指摘する海の脱炭素で大切なこと

商船三井のバイオメタノール船(同社提供)

商船三井が家畜のふん尿などが由来のバイオメタノールを船舶燃料に使う脱炭素に取り組んでいる。製造過程で温室効果が極めて高いメタンを回収するため、温室効果ガス(GHG)の削減効果が燃焼などによる排出量を実質的に上回る特徴を持つ。メタノール燃料自体、重油と比較してGHG排出量を10%強削減できるため、海運業界で導入が進む。商船三井ではバイオメタノールの実証も進めることで、メタノール燃料の導入促進を目指す。

商船三井は28日、メタノールの世界最大の供給社であるカナダ・メタネックスと共同で、主要燃料の一つにバイオメタノールを用いたメタノール輸送タンカーによる大西洋横断航海に成功したと発表した。1月17日に米ルイジアナ州を出発し、2月4日にベルギー・アントワープ港に到着した。化石燃料由来の従来型のメタノールとバイオメタノールを混焼。18日間の航海中に消費した燃料からのGHG排出量は、燃料の製造から消費までを考慮すれば実質ゼロになったという。

商船三井の高橋和弘執行役員は、「ふん尿やゴミなどから排出されるメタンは温室効果が非常に高く、これまでは大気に放出されていた」と指摘する。メタンの温室効果は二酸化炭素(CO2)の25倍であり、これを回収してメタノールとして再利用することで、GHG排出量を実質ゼロにできるとしている。

海運業界では脱炭素に向けて、重油に代わるさまざまな燃料を導入・実証している。自動車船やフェリーなどですでに導入が相次ぐ液化天然ガス(LNG)燃料船のほか、2030年代後半の本格導入を目標にGHG排出量が実質ゼロのアンモニアや水素を燃料とする船舶の実証も進む。

その中でもメタノールはすでにメタノールの運搬船で燃料として利用されている上、世界約130港にメタノールの貯蔵拠点があるなど、燃料補給がしやすい。さらに常温常圧で液体のため、取り扱いも容易だ。

商船三井によると就航済みのメタノール燃料船は25隻で、大半がメタノール運搬船だという。このうち5隻は同社が保有する。一方、脱炭素に積極的な欧州の海運会社を中心にメタノールを燃料とする船舶の発注が相次いでいる。新造船の発注残が約100隻にも積み上がり、その大半はコンテナ船だという。

商船三井は海の脱炭素の実現に向け、メタノールやLNGなどを燃料とする船舶の導入・実証を進める。だが、こうした代替燃料の燃料費や船価は従来より割高になる。高橋執行役員は「海運業界における環境規制に対する取り組みは、海運業界だけが全ての責任と負担を負うものでは決してないと考えている」とした上で、荷主や用船社などすべての受益者に対し、「どういう風にコストを負担するか話し合って成り立たせるのが大事だ」と指摘する。

日刊工業新聞 2023年03月01日

編集部のおすすめ