ZMPが“東京の真ん中”でロボ配送サービスを開発する理由
サービス支えるインフラ構築
「都市部は信号や歩行者など配送ロボットをとりまくあらゆる課題がある。だから開発ステージに選んだ」とZMP(東京都文京区)の河村龍ロボハイ事業部事業部長は説明する。東京都中央区という”東京の真ん中”で配送サービスを開発する。自動走行の継続性の中間目標を前倒しで達成し、月に100キロメートルの走行距離は2月中に達成予定だ。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクトでは監視員1人で10台の遠隔監視を求めている。この技術難度が高く、各チームを苦しめている。1人で運用すると同時多発の緊急事態に対応できないため「2人で20台」「4人で40台」など複数人での遠隔監視システムが検討されている。複数人で監視すると1人が対応に入っても他の人が補うことができる。
ただ人数を増やすと稼働台数が増える。20台を同時に運用するには配送数の確保が必要だ。この点、配送数の多い都市部は有利になる。同時に配送ロボが直面するトラブルの種類も多い。自動販売機や路上駐車、交差点の形など、走る環境が多様なためだ。
子どもに囲まれ動けなくなることもある。河村部長は「ロボットに顔があることが大切」と説明する。囲まれたら困った顔で”道を空けて”と頼む。人と共存するには重要な機能だ。
さらに変化の多い街並みに対応するため、こまめにロボ用の地図データを撮ることを計画している。初めはセンサーを背負った人間が歩き回り、立体地図を作る。河村部長は「低コストで実現するにはどうするか考えている。(米アップルのスマートフォン)iPhone(アイフォーン)に(高性能センサー)LiDAR(ライダー)が搭載されたので一般の人から集めたい」と知恵を絞る。
ZMPは視覚障がい者向けに道案内のアプリケーションを提供している。高層ビルの立ち並ぶ都市部では全地球測位システム(GPS)だけでは正確な自己位置を推定できないためだ。スマホで計測しながら歩くと、交差点などを正確に把握できる。
この道案内アプリと配送ロボに地図データを活用する構想だ。歩道の段差や路面の凸凹など、バリアフリーに関するデータは人にもロボにも重要になる。
地図データは他の配送ロボ事業者にも有用だ。河村部長は「地図データをプラットフォーム(基盤)サービスとして事業化したい」という。さまざまなサービスと組み合わせてデータを集め、配送ロボのサービスを支えるインフラ作りを進める。
NEDOプロでは住宅街やオフィス街、都市部と地方部など、4チームがそれぞれの地域で開発に取り組む。2024年度までの3年間で知恵を集め、相乗効果を発揮できるか注目される。(小寺貴之が担当しました)