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アルプス物流と親子上場解消、アルプスアルパインの二つの目的

アルプスアルパインは2022年6月、アルプス物流との親子上場を解消した。アルプス物流の取締役に占めるアルプスアルパイン出身者の比率を社外取締役を増やして低減。アルプス物流はアルプスアルパインの連結対象から外れ、持ち分法適用会社になった。アルプス物流の経営の独立性は高まり、事業拡大に集中しやすくなる。アルプスアルパインもアルプス物流の知見を自社のコスト削減などに生かし、今後の成長につなげたい考えだ。

アルプス物流は電子部品の運送や保管、輸出入のほか、一般消費者向け宅配サービスも手がける。アルプスアルパインとは親子上場の関係だった。

アルプスアルパインのアルプス物流への出資比率は約49%。ただアルプス物流の取締役は過半数がアルプスアルパイン出身者で、連結要件を満たしていた。それが22年6月のアルプス物流の株主総会で社外取締役の人数を増やし、取締役の過半数とする議案がアルプスアルパインも賛成して可決。出資比率は変わらないが、親子上場は解消した。

「背景には二つの目的がある」とアルプスアルパインの小平哲常務執行役員は話す。一つはグループのガバナンス強化。一般に上場子会社は親会社と一般株主との間に利益相反が生じる可能性があり、東京証券取引所もコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)で少数株主の利益保護のため社外取締役の増員を求めている。今回、こうした市場の要請に応えた形だ。

もう一つがアルプス物流のビジネス機会の拡大。「物流業界は大きく変化しており、アルプス物流も既存ビジネスの延長では成長が見込みにくい。今後は当社

以外とのビジネスを伸ばし、業績向上につなげるストーリーが描きやすくなる」(小平常務)。

ただ両社とも連携は続ける考えだ。「物流コストが世界的に高騰する中、アルプス物流からの情報を生かし、コスト抑制につなげたい。アルプス物流も高い品質などアルプスブランドの信用を今後のビジネス拡大に生かせる」(同)。経営の独立性を保ちつつ、共存共栄を目指す取り組みが始まっている。

日刊工業新聞 2023年01月19日

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