VチューバーはBtoB企業の認知拡大に貢献するか
昭和電線ホールディングス(HD)傘下のアクシオ(東京都品川区、渡辺浩司社長)は、バーチャルのキャラクター(Vチューバー)を自社の情報発信に活用する。展示会などにも登壇させ、会社の知名度向上につなげる。BツーB(企業間)の企業がVチューバーを起用するのは珍しいという。昭和電線グループ内での利用拡大も今後検討する。電線業界では若年層の認知度向上や人材確保が課題で、アクシオの取り組みは注目されそうだ。(高島里沙)
アクシオは公式Vチューバーとして「芥川しおり」を起用する。ホームページ上で専用サイトを立ち上げ、公開した。動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」でもPR動画を発信するなど周知を図る。
また受け付け業務や製品紹介などの情報発信に加え、展示会にも登場する。説明員に代わって、モニター上で展示内容を説明することを想定している。
アクシオでは企業価値向上に取り組む社内の有志6人が、外部クリエイターらと協力しながらデザインを練るなど、約半年かけてVチューバーを作成した。同社は、受託型のシステム構築(SI)事業から脱却し、自社製品を提案する企業への変革を図っている。自社の認知度向上によって、人材の確保や新規顧客の獲得にもつなげていきたい考えだ。
昭和電線グループでは、電線や電気設備資材を購入できる電子商取引(EC)サイト「蛙屋」も手がけている。こうしたインターネットビジネスを積極化している点も踏まえ、将来はグループ内でVチューバー関連の取り組みを拡充する可能性もある。
電線業界では、認知度向上や人材不足が課題になっている。業界団体の日本電線工業会は打開策として、電線愛好家で俳優などとして活動する石山蓮華さんを電線アンバサダー(大使)に起用するなど、若年層へのPRを推進する。
業界や企業の知名度は採用活動にも直結するため、人材の確保に向けても認知度向上が欠かせない。昨今、企業の存在意義(パーパス)が問われる中、テレビCMをはじめとする広告宣伝においても商品や事業内容ではなく、社名や自社の価値、魅力などを打ち出す会社が増加傾向にある。参加交流型サイト(SNS)の普及で企業側も気軽に情報発信できるようになったが、何が消費者の心に“刺さる”かは未知数で、地道な努力が求められそうだ。