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過渡期迎えたビール市場、酒類大手がRTDの商品強化を図る理由

10月酒税改正にらむ
過渡期迎えたビール市場、酒類大手がRTDの商品強化を図る理由

10月の酒税改正で第三のビールは増税となり、発泡酒と一本化

10月の酒税改正を前に、ビール類(ビール、発泡酒、第三のビール)市場が過渡期を迎えている。2回目の改正では1回目に続きビールが減税となり、第三のビールが増税となって発泡酒と一本化。これまで、低価格を売り物に市場を拡大してきた第三のビールや発泡酒は優位性を失いつつある。酒類大手4社は低価格品の需要が缶チューハイや缶ハイボールといったRTD(そのまま飲めるアルコール飲料)にシフトするとみて、商品の強化を図る。(高屋優理)

酒税法は3段階での改正が進められており、2020年に1回目の改正を実施した。同年は350ミリリットル缶でビールが7円の減税、第三のビールが9・8円の増税となり、価格差が縮小。23年10月の2回目の改正では、ビールがさらに7円の減税となり、第三のビールが9円増税となって発泡酒と同額になる。

ビール類市場のシェアは、改正前は価格差が残ることから、第三のビールの需要は変わらないとみる向きも多かったが、ふたを開けると20年10月以降、ビールが市場を伸ばした。中でも21年11月―22年9月までは11カ月連続で前年同月比プラスが続いた。一方、第三のビールは市場の縮小が続いている。

ただ、新型コロナウイルス感染拡大による酒類提供制限などで業務用ビールの需要が下がり、市場全体が縮小する中、20年にビールと第三のビールのシェアが逆転。第三のビールが上回った。酒類提供制限が解除された22年はビールが再逆転した。

こうした中で迎える10月の改正で、酒類大手4社は主力ブランドのリニューアルなど、ビールへのマーケティング強化を打ち出す。アサヒビールの塩沢賢一社長は「第三のビールはそこまでのブランド数はいらなくなる」とし、今後のブランドの整理を示唆した。

一方、低価格帯商品の受け皿は、発泡酒や第三のビールから、缶チューハイなどのRTDにシフトするとみて、各社、商品施策を強化する。アサヒは「RTD3カ年プロジェクト」を始動。主流となっているレモン以外のフレーバーや、新たな情緒的価値を打ち出す新商品をエリア限定で展開し、早期の全国展開を目指す。25年にRTDの売上高を22年比の1・5倍に拡大する。

サッポロビールもRTDの商品を拡充する方針で、23年に前年比18%増の売り上げを目指している。

酒税は最終的に26年の3回目の改正で、一本化される。26年に向かって、各社が複数のブランドを展開する第三のビールは淘汰されることになりそうだ。

日刊工業新聞 2023年01月26日

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