ビール4社が酒類一斉値上げ…原料価格高騰響き“追加”も
ビール大手は10月1日からビール類(ビール、発泡酒、第三のビール)を値上げする。穀物など原料価格の高騰やアルミニウムなどの資材価格、原油などのエネルギー価格の上昇が止まらず、4社すべてが10月から足並みをそろえて値上げする。原燃料価格の高騰は足元も止まっておらず、今後も収益への圧迫が続けば、さらなる値上げもありそうだ。(高屋優理)
サントリーホールディングス(HD)は原材料の市況について、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年の平均価格と3月の価格を比較し、アルミが約1・9倍、麦芽は約2・1倍、原油価格は約1・6倍上昇していると分析している。22年12月期は原材料価格の高騰によるコスト上昇が200億円に上るとみている。ただ、コスト削減などにより事業利益への影響は100億円程度に抑えたいとしている。
原材料価格の高騰を受け、サントリービール、サントリースピリッツは、ビール類とRTD(そのまま飲めるアルコール飲料)の156品目を値上げする。ビール類は63品目で、6―10%の値上げとなり、RTDは93品目が2―6%の値上げとなる。
アサヒビールはビール類152品目と国産ウイスキー10品目で、店頭想定価格で6―10%の値上げとなる。ビール類の缶商品の値上げは08年3月以来、14年7カ月ぶり。アサヒグループホールディングス(GHD)は当初、22年12月期の原材料高による事業利益での減益要因を400億円程度と見込んでいた。だが、穀物、資源、原油といずれも価格の上昇が続いていることから、さらに200億円程度上ぶれると見込み、10月の値上げに踏み切った。
キリンビールはビール類や輸入ウイスキーなど計278品を店頭想定価格で約6―13%値上げする。キリンホールディングス(HD)も当初、22年12月期に原材料高による事業利益での減益要因を140億円とみていたが、市況の上昇を受け、5月に180億―210億円と見通しを引き上げた。
サッポロビールはビール類とRTDの121品目を値上げする。サッポロも当初、事業利益で30億円の減益要因と見込んでいたが、48億円に引き上げている。
穀物や資源などの価格上昇は足元も続いており、22年12月期はさらなる減益要因の増大も見込まれる。新型コロナウイルスの感染拡大による行動規制が解除され、酒類市場の回復が期待されているものの、収益改善の道筋がなかなか見えない状況だ。各社とも10月以降のさらなる価格改定は回避したい構えだが、市況が今後どのようになるのか、それにどこまで耐えられるのか、我慢比べの様相を呈している。