自動車排ガス浄化触媒の貴金属半分以下に、フルヤ金属が量産実証する「ナノ合金材」の実力
フルヤ金属は自動車の排ガス浄化触媒に使われる貴金属を半分以下に抑えられるナノ合金材料(ナノは10億分の1)のサンプル出荷を始めた。高価なロジウムの使用量をゼロにできるなど需要拡大が期待される。このほど量産実証設備を土浦工場(茨城県土浦市)で稼働した。2025年以降の事業化を目指す。本格量産時には50億円以上の設備投資を想定する。
フルヤ金属のナノ合金材料は、白金などの貴金属に、豊富で安価な金属を組み合わせてナノサイズの合金にしたもの。触媒性能を維持しながら貴金属の使用量を大幅に低減できる。
現在の自動車用排ガス浄化触媒は白金とパラジウム、ロジウムの3種の貴金属が使われているが、ナノ合金化により性能を高め、ロジウムを使わず、貴金属を半分以下にする。使用する金属の種類や配分は、要望に応じて調整できる。
量産実証設備には、科学技術振興機構(JST)の支援を受けて京都大学と共同開発した製造技術を用いた。「フロー合成」という手法で長い管状の反応器内に原料を流しながら連続合成する。具体的には原料の金属イオンとナノ合金の足場となる担体(支持体)を投入。同イオンを高温・高圧下で還元反応させてナノサイズの合金粒子を担体に固定化する。
フルヤ金属は量産技術を確立した設備を用いて量産時と同じプロセスで製造したサンプルの供給を自動車業界向けなどに始めており、顧客が実機で試験できる量を供給できる。自動車以外で触媒使用量の少ない用途であれば現状で量産レベルの供給が可能という。
フルヤ金属は白金族金属(プラチナグループメタル)のイリジウムとルテニウムで世界トップクラスの企業。
日刊工業新聞 2023年01月20日