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ソニーセミコンがサービス開始、「エッジAIセンシング」システム開発基盤の狙い

ソニーセミコンがサービス開始、「エッジAIセンシング」システム開発基盤の狙い

SSSの「IMX500」を搭載したカメラデバイス(カナダのルーシッド・ビジョン・ラボ製)

ソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS、神奈川県厚木市、清水照士社長)は、イメージセンサーを使ったシステムの開発プラットフォーム(基盤)「AITRIOS(アイトリオス)」で、システム構築(SI)事業者向けの有償サービスを米国と日本で始めた。画像データを使い、小売店などの業務を効率化するシステムをクラウド上で開発できる。SSSのプラットフォーム戦略が海外でも広がり始めている。(編集委員・錦織承平)

アイトリオスはSSSが2022年11月に日本国内で有償サービスを始めた、「エッジAIセンシング」の基盤。画像データを処理する人工知能(AI)を搭載したSSSのイメージセンサー「IMX500」を使って、さまざまなセンシングシステムを開発できる環境をクラウド上で提供している。

例えば、カメラ画像から店舗の入店人数を計測するアプリケーションを開発する場合、開発者はIMX500を搭載したカメラデバイスを購入してアイトリオスに接続。アイトリオス内で入手したAIモデルに学習させ、画像データを端末側で処理して入店人数データを抽出するAIを作り、カメラデバイスに実装できる。

ハードウエアの選定やAIの開発などにかかる作業時間を省略して、アプリの開発時間やコストを削減できる利点がある。アプリ開発者だけでなくAI開発者もこの環境を利用して、多様な用途に応じた画像データ処理のAIを開発することが可能だ。

今回SSSが米国と日本で提供を始めたのは、店舗やビルなどでカメラを使ったセンシングシステムを実際に構築するSI事業者向けサービス。相談の多い小売業界向けでは商品棚のモニタリングや人の滞留検知、属性付きの人数計測などのシステムを構築できる。近く、欧州でもサービスを始める予定だ。

SSSの柳沢英太システムソリューション事業部長は「画像データは音や温度、気圧といった一般的なIoT(モノのインターネット)センサーに比べ、データ容量が6億―8億倍と大きく、利用するには端末側でうまく処理することが必要」と説明する。自動車用のセンシングなどにも使われるように、画像データには有用な情報が多く含まれるが、利用するには、端末側の素早い処理を担うAIの充実が欠かせない。

そのためSSSは近く、米国と欧州でもAIやアプリ開発者向けのサービス開始を予定している。AIスタートアップが多い欧米で、画像データの用途を広げるAIの開発を促す狙いだ。


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日刊工業新聞 2023年1月19日

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