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世界トップレベルの機能性化学へ、新生“レゾナック”が描く道筋

昭和電工と昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)の完全統合により発足した新生“レゾナック”がいよいよ始動した。総合化学から半導体材料を中心とした「世界トップクラスの機能性化学メーカー」へ脱皮を目指す。歴史ある2社から技術力を受け継ぎつつ、目指す姿は「人」と「共創」を核とする新たな企業文化を持つ会社だ。(梶原洵子)

レゾナック・ホールディングスの高橋秀仁社長は17日、都内で開いた新会社発足説明会で「今、創業者の気持ちでこの場に立っている」と語った。統合により売上高1兆4000億円超で国内の化学7位、半導体材料は世界トップクラスとなったが、単なる統合では終わらせないという決意だ。

高橋社長は就任2年目。経営方針は全くぶれず、すでに事業ポートフォリオ入れ替えのためアルミニウム缶など8事業を売却し、半導体材料で複数件の生産増強投資を決めた。研究開発においても、旧日立化成のウエハー研磨剤を旧昭和電工の原料技術で補強するなどの「イノベーションのリレーが起きている」(高橋社長)と語る。

2023年は新社名に深く関係する“共創”を本格化させる。年内に研究開発の中核拠点「共創の舞台」(横浜市神奈川区)へ開発メンバーの大半を移管する。同拠点には計算科学や材料解析、量産化技術・設備管理などの研究開発の土台となる機能が集結。地域や社会に開かれたイノベーション施設とし、第6世代通信(6G)はじめ次世代高速通信材料やプラスチックケミカルリサイクルなどの長期課題に取り組む。

小山事業所(栃木県小山市)内では、電気自動車(EV)向けパワーモジュール材料の評価・開発拠点「パワーモジュールインテグレーションセンター」を本格始動させる。自社の評価・シミュレーション機能を自動車などの取引先とも共有し、材料開発に生かす。

2拠点は先に稼働した半導体後工程のオープン開発拠点と合わせて、共創の3本柱となる。「課題はあまりに大きい。真摯(しんし)に向き合い、化学の力で社会を変えたい」(高橋社長)。

急激な企業変革に合わせて従業員のマインドも変えることも重要だ。高橋社長は就任以来コミュニケーションに力を入れ、変革に肯定的な反応が多いものの「全く賛同できない」という声もある。

だが、多くの企業が半導体材料で成長を目指す中で、違いを出すのは「人材しかない」が高橋社長の持論だ。「変える速度とみんなの気持ちのギリギリのバランスで進める」(同)とし、挑戦し続ける人材が活躍する企業へ変革する。

会見する高橋社長
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日刊工業新聞 2023年01月18日

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