ニュースイッチ

潮目が変化…「半導体材料」需要動向に警戒感

潮目が変化…「半導体材料」需要動向に警戒感

メーカーが限られるシリコンウエハーは品薄感が続く(イメージ)

半導体デバイスの調整局面入りは、半導体材料にもまだら模様ながら影響を及ぼし始めた。三菱ガス化学の半導体パッケージ基板材料(BT材料)の販売は5月に入って下がり、JSRは4―6月の半導体材料製品群の販売が当初計画を下回った。現在は販売堅調な企業も下期の調整へ警戒感を強める。半導体材料は化学各社の業績のけん引役となっており、今後のデバイスの需要動向に注視が必要となる。(梶原洵子、大川諒介)

まず需要動向が変わり始めたのは汎用的な半導体向けの材料だ。三菱ガス化学のBT材料のうち、汎用品で低価格帯スマートフォンやテレビ向け半導体の製品が需要落ち込みの影響を受けた。4月は好調だったが、5月から販売が下がり始めた。

JSRの江本賢一取締役執行役員は「半導体材料全体で4―6月期は前年同期に比べ増収増益も、当初計画比で進捗(しんちょく)が弱かった」と振り返る。中国の物流停滞による出荷減などが響いた。通期では一部のメモリーや相補型金属酸化膜半導体(CMOS)センサーなどの調整を織り込む。

現在影響の出ていない企業も警戒感を強める。三井化学はウエハー裏面研削時の回路表面保護テープについて「下期に在庫調整局面があるのではないか。弱含みで見ている」(中島一取締役専務執行役員)と言及。

半導体回路形成に使うフォトレジストや高純度ケミカルについて住友化学は「上期は好調が続くとみているが、少し潮目が変わりつつあるかもしれない」(佐々木啓吾常務執行役員)、半導体製造の前工程・後工程の材料を幅広く展開する昭和電工も「予断を許さずに見る」(染宮秀樹取締役常務執行役員)と、今後の需要動向を注視する。

ウエハー品薄、中長期見据え投資加速

一方、信越化学工業とSUMCOのシリコンウエハー大手2社の見方は強気だ。300ミリメートルおよび200ミリメートル品の需要動向について信越化学工業の轟正彦取締役兼専務執行役員は「7―9月は、好調だった4―6月と同じかプラスアルファ。調整は感じられない」と話す。

というのも世界でウエハーメーカーは限られ、直近の供給能力の拡大も限定的。ウエハーの品薄感は続いている。新型コロナウイルス感染拡大以降、需要増加と供給網の混乱から、半導体デバイスや半導体材料の在庫を積み増す動きが活発化したが、ウエハーは積み増せなかった。SUMCOはロジック半導体向け300ミリメートルウエハーの顧客在庫月数は過去最低水準になっていると推定する。

両社は今後も供給能力を上回る需要が継続すると予想。この状況は23年まで続く可能性がある。

中期的な材料需要増加ペースはむしろ加速している。昭和電工の染宮取締役常務執行役員は「顧客からロードマップを前倒しするとの声がある。当社も来年に決める予定の投資を今年決めるような状況だ」と話す。

同社は新たに約200億円を投じ、ウエハー研磨剤(CMPスラリー)の生産能力を従来比2割引き上げることを決めた。昭和電工マテリアルズの山崎事業所の勝田拠点(茨城県ひたちなか市)と台湾子会社で、23―25年にかけて順次生産を立ち上げる。また、山崎事業所(同日立市)で評価機能を増強する。昭和電工は5年間で半導体・電子材料に2500億円を投資する。

住友化学も半導体材料群への投資が1年前の見通しに比べ拡大傾向で、25年までの総投資額は500億円程度を見込む。24年には韓国で最先端フォトレジストの生産を始める。

SUMCOは総額約3300億円を投じ、国内外で新工場を建設する。主力となる佐賀県伊万里市の新工場は23年後半から生産を立ち上げ、25年前半にフル生産を見込む。ウエハー市場は「半導体市場の成長ペースに追いついていない」(橋本真幸会長兼最高経営責任者〈CEO〉)状況で、供給拡大を急ぐ。

信越化学工業は既存拠点への設備投資により需要に対応する。「約束に基づいて能力増強をこなし、増益を追求していく」(斉藤恭彦社長)とし、契約を結ぶ顧客企業への供給責任を果たす。

調査会社の米ガートナーは7月27日、22年の世界半導体売上高の成長率について前回予想の半分程度の前年比7・4%増に引き下げた。同26・3%増となった21年実績に比べ大幅な減速となる。さらに23年は同2・5%減と予想している。

ただ、需要減速は一律ではない。上海の都市封鎖の影響で生産の落ちた汎用スマホや巣ごもり需要の一服したパソコンの下落が大きい。一方、半導体材料各社はデータセンターや第5世代通信(5G)、車載用途は堅調と予想する。また、ハイエンド向け材料は好調で、JSRは4―6月期に最先端レジストなどが堅調だった。

封止材大手の住友ベークライトの中村隆専務執行役員は、今後の需要について「中国市場など民生品の調整局面がいつ終わるかで動きが変わる」と指摘する。自動車生産の回復が進めば、車載半導体向けの引き合い増加で民生の落ち込みを「リカバリーできるのではないか」と期待する。

足元で世界経済の減速懸念が強まり、不確実性は高まっている。新工場稼働時に半導体市場が一層減速すれば、収益への影響は大きい。変調を見極めて稼働時期などを細かく調整しつつ、市場成長に対応する必要がある。

日刊工業新聞2022年8月12日

編集部のおすすめ