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キヤノンが開発、6Gスマホ対応「世界最高出力小型テラヘルツデバイス」の全容

キヤノンは16日、大量の情報伝送に向き、第6世代通信(6G)の実現に欠かせないとされる電磁波のテラヘルツ波を発信できる化合物半導体デバイス(写真)を開発したと発表した。複数のアンテナ同士を結ぶ配線の設計などを工夫。競合他社の製品よりも強いテラヘルツ波を狙った方向に遠くまで送ることが可能になり、小型化も図れた。6G対応スマートフォンやボディースキャナーなどでの使用を想定し、早期の実用化を目指す。

テラヘルツ波は周波数が100ギガ(ギガは10億)―10テラヘルツ(テラは1兆)の電磁波を指し、6Gでは100ギガ―450ギガヘルツの領域のテラヘルツ波の使用が見込まれる。通信各社が使える電波の範囲である帯域幅は5Gの数十倍となり、6Gは5Gの10倍以上の高速通信が期待される。

キヤノンが開発したのは、テラヘルツ波を発する36個のアンテナを集積した3・2ミリメートル四方の化合物半導体チップを10ミリ×8ミリメートルのパッケージに搭載したデバイス。アンテナ同士を結ぶ配線の並べ方やアンテナ同士の接続の設計を工夫し、450ギガヘルツのテラヘルツ波を競合他社製品の約10倍に相当する「世界最高」(キヤノン)の出力で放射できるようにした。

設計の工夫で正面方向の指向性(電波の発信源からの角度によって生じる電波の強さ)も約20倍向上。レンズやホーンアンテナなどの部品を使う必要がなくなり、同業他社製品より体積で約1000分の1の小型化を実現できた。6Gスマホへの搭載などでテラヘルツ波の活用場面が広がる可能性がある。

日刊工業新聞 2023年01月17日

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