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核融合向け世界初開発、量研機構とキヤノン系が実現した「3周波数プラズマ加熱装置」の役割

核融合向け世界初開発、量研機構とキヤノン系が実現した「3周波数プラズマ加熱装置」の役割

ジャイロトロンの外観及びジャイロトロンシステムの概要(量子科学技術研究開発機構提供)

量子科学技術研究開発機構キヤノン電子管デバイス(栃木県大田原市)は、核融合炉用の3周波数プラズマ加熱装置「ジャイロトロン」を世界で初めて開発した。1メガワット(メガは100万)の高出力マイクロ波を、幅広い運転に対応できるよう三つの周波数で発生し、5分間の連続動作も実現した。従来は一つの周波数しか出力できず、プラズマ加熱条件を広げられなかった。核融合発電に必要なさらなる多周波数化の実現につながると期待される。

開発したジャイロトロンは、170ギガヘルツ(ギガは10億)、137ギガヘルツ、104ギガヘルツのマイクロ波ビームを出力し、プラズマを加熱できる。

これら3周波数に対して動作試験し、フランスで建設中の国際熱核融合実験炉(イーター)と同出力の1メガワットで連続運転を実証した。

ジャイロトロンは、電子を加速してその運動エネルギーをマイクロ波に変換する。従来は複数の周波数を発生させると、最適化した一つ以外はマイクロ波を核融合炉に伝搬する導波管の入り口で散乱され、必要な性能が得られなかった。

そこで、マイクロ波を整形する機器を改良するとともに、この機器から出力後にビームを整形・伝搬する6枚の金属ミラーも一括して最適化した。これにより異なる周波数のマイクロ波を同一方向に放射できるようになった。どの周波数でも機器内部でのマイクロ波損失を抑えられ、長パルス運転を実現した。

日刊工業新聞 2022年12月28日

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