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スマホ部品需要は先行き不透明…アルプスアルパインが迎えた成長持続の正念場

アルプスアルパインが成長を持続できるか正念場を迎えている。

6月に発表した2024年度を最終年度とする中期経営計画で、M&A(合併・買収)の700億円を含む2000億円の積極投資を示すが、稼ぎ頭のスマートフォン(スマホ)部品は需要の先行き不透明感が強い。積極投資の効果も生かし、車載ビジネスの収益性を高められるのか、市場は注視している。

2000億円の投資について「基本的に中計の3年間で生み出す営業キャッシュフローから賄う」(同社)とする。22年度の営業利益は500億円、減価償却費は471億円の見通しのため、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は971億円。年平均600億円超の営業キャッシュフローを生み出すという目標には余裕があるようにも見える。

ただし利益の内訳を見ると、大半はスマホ内蔵カメラの手ぶれ補正(OIS)用部品(アクチュエーター)が稼いでいるのが実態だ。アクチュエーターが営業利益に占める比率は7―9月期で7割超(推定)。一方、車載機器を含むモジュール・システム(MS)事業はCASE対応に出遅れ、21年度に営業赤字を計上するなど近年は伸び悩んでいた。

今中計のMS事業では主力製品を大型ディスプレーなどが一体となった「デジタルキャビン」に転換する。デジタルキャビンの限界利益率は入り口管理で25―27%を確保。「限界利益率が従来製品より高いデジタルキャビンが増えれば損益分岐点は4000億円と現状比横這いを維持できる。24年度の車載機器の受注額5000億円の確保はほぼ堅く、利益が見込める」(栗山年弘社長)。

今後、北米スマホメーカーが超望遠カメラの搭載を検討しており、トップシェアのOIS用アクチュエーターの大部分(利益で推定200億円規模)が24年度にもなくなる可能性がある。CMOSセンサーを動かすアクチュエーターは残るが、購入部品も多く利益率はOIS用に届かないと見られる。総合力を生かし、MSや新規事業で目標通りの利益を上げられるのか、残された時間は多くない。


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日刊工業新聞 2022年12月08日

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