配膳ロボットが縦横無尽に駆け巡る、北陸のラーメンチェーンが進める時流に沿った改革
北陸地方を中心にラーメンチェーン店「8番らーめん」を展開するハチバンは、同社初となる配膳ロボットを2022年10月開店の新店舗に採用した。スマートフォンによるモバイルオーダーシステムや、支払い方法を自身で選択するセミセルフレジも併せて取り入れ、従業員の働き方改革と調理に集中しやすい環境づくりを進めている。(金沢支局長・尾碕康平)
10月26日に開店した「8番らーめん松任駅北口店」(石川県白山市)。JR松任駅からほど近いこの店舗の中では、店名にちなんで名付けた配膳ロボット「まつこちゃん」が筐体(きょうたい)内のトレーにラーメンを抱えながら縦横無尽に駆け巡っている。
同店での実導入に先立ち、6月から「同泉ケ丘店」(金沢市)で実証を実施。その時は「子どもがロボットによる配膳を見て、笑顔で喜んでいた」(川上裕樹8番らーめん事業部副部長)という。
無論、子どもの笑顔だけが採用の理由ではない。ラーメンはスープや具材が入った丼が重くなりがちで、飲食物の中でも、配膳の際の従業員の負担が大きい。コロナ禍以降、飲食業界で人手の確保が困難になっている中、ロボットでの自動化・省人化は当然の帰結だった。
配膳ロボットはファミリーレストランなどでも採用が進むが、汁物のラーメンを運搬するには細心の注意が必要だ。実採用に至るまで、スープがこぼれない運行速度を探るのに調整を重ねた。
3段あるトレーをすべて使い、3人前まで運べる仕様にもできたが「最下部の3段目がほぼ足元になるため、衛生上よろしくない」(同)と考え、2人前仕様とし、3段目はカゴ置き場にして下げ膳で使うようにした。
自動化・省人化の仕掛けは配膳ロボットにとどまらない。同時に導入したモバイルオーダーシステムによって、スマホで注文できるようにした。テーブルの上に掲示している2次元コードをスマホで読み込むと、メニューを表示して、注文を受け付ける。
さらに会計は支払い方法を客が自ら選び、店員との現金の受け渡しをせずに済ませられる「セルフレジ」を初めて導入。これにより注文から配膳、決済に至るまでの行程において、従業員と来客とが接触せずに完結することも可能な仕組みを構築した。接客の頻度が減る分、限られた人員が調理に専念できる利点も生まれる。
コロナ禍による人手不足や非接触への対策の必要性が高まる中、同社は今後も、ロボット導入やITに対応した店舗を増やしていく考えだ。
同社は1967年に8番らーめんの1号店を開店させてから、22年で55周年を迎えた。経営理念に「『食』と『おもてなしの心』で人やまちを笑顔に、元気に。」とある通り、半世紀以上にわたり、創業以来のこだわりの味を北陸の人々に提供してきた。その根幹を維持するため、時流に沿った改革にも余念がない。