投資も加速、世界で注目される「ブルーエコノミー」とは
スマート水産業でサステナブルな成長を
環境に配慮した活動を「グリーン」と呼ぶのに対し、海に関連して「ブルーエコノミー」という言葉があります。2012年頃、国連と太平洋やカリブ海などの島国を中心に、海洋の生態系システムを保全しながら経済的な発展を目指す立場から始まりました。
その後、経済協力開発機構(OECD)や世界銀行といった国際機関のほか、海洋と深い関係のある国々を中心に、海洋と密につながっている経済活動を総称して「ブルーエコノミー(またはオーシャンエコノミー)」と呼ぶようになっています(表)。
例えば欧州連合(EU)では、海洋がもつ可能性や潜在能力を活用するブルーエコノミーを通じて、さらなる技術革新や持続的成長を目指すという姿勢を示しています。毎年、域内の雇用者数や域内総生産(GDP)などを調査しており、おおよそ500 万人、GDPの約4%を生み出しているとしています。
海洋は、地球上の約7割を占め、生命の誕生から今日まで、酸素の生成、CO2の吸収、栄養素の循環などを通じて、地球上の生命を支え続けています。人間の交流や貿易とも切り離せません。けれども、気候変動やそれに伴う酸性化・水温上昇、水産資源の枯渇、藻場・干潟・サンゴ礁の喪失、化学物質やプラスチック廃棄物による汚染など、大規模で深刻な問題に直面しています。
これらの海のサステナビリティに関する問題には、国際レベルから地域レベルまでの規制や、認証などの市場による対応が始まっています。こうした動きは、事業存立の危機やコスト負担増加になる反面、新たなビジネス機会にもなります。
さまざまな種類の投資家が、ブルー分野での投資ファンドを立ち上げ、持続可能な水産業や、脱炭素技術(洋上風力やほかの海洋由来の再生可能エネルギー、海運や漁業に関する省エネルギー)、環境汚染の防止などに特色のある企業への投資を始めています。
今後、マングローブ林の保護保全、海運の脱炭素化、持続可能な水産、洋上発電といった分野に投資を行えば、経済的な価値、環境的な価値、それに健康への好影響で数倍のリターンが期待できるとする試算※もあります(図)。
スマート水産技術が、海洋環境の状態や、働く人の健康などに好影響を及ぼすことを示せれば、良い方向で「インパクトを創出している」と評価されやすくなると言えます。
※試算:世界資源研究所(2020)“A Sustainable Ocean Economy for 2050, pproximating its Benefi ts and Costs”
Point
● 国際的にブルーエコノミーへの注目度が向上。一種のブームに
● スマート水産業がもたらす多面的な効果にフォーカス
(「図解よくわかるスマート水産業」p.160-161より抜粋)
<販売サイト>
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<書籍紹介>
書名:図解よくわかるスマート水産業 デジタル技術が切り拓く水産ビジネス
著者名:三輪泰史
判型:A5判
総頁数:168頁
税込み価格:2,420円
<目次>
第1章 日本の水産業の特徴
第2章 日本の水産業に迫る5つのリスク
第3章 水産物需要のトレンド
第4章 スマート水産業はビジネスになる
第5章 スマート水産業×海面漁業
第6章 スマート養殖業
第7章 地域の資源を活かしたサステナブル養殖
第8章 スマート水産業×加工・流通
第9章 付加価値を高めるバイオテクノロジー
第10章 台頭する藻類養殖
第11章 スマート水産業を加速させる最新トレンド