水産業での活用が加速するIoT、AI、ロボティクス
スマート水産業の定義と分類
農業分野では自動運転トラクター、農業用ドローン、農業ロボットといった、IoT(モノのインターネット)・AI(人工知能)・ロボティクスなどを活用したスマート農業の普及が加速しています。同様に、水産分野でもそれらの先端技術を活用したスマート水産業の研究開発が進められています。
政府はスマート水産業について「ICT、IoT 等の先端技術の活用により、水産資源の持続的利用と水産業の産業としての持続的成長の両立を実現する次世代の水産業」と定義しています。産業面だけでなく、資源管理面も含んでいる点が、水産業ならではの特徴と言えます。
それでは、スマート水産業の事例をいくつか見ていきましょう。スマート水産業はスマート農業と同様に①匠の眼 ②匠の頭脳 ③匠の手の3つに大別されます(図)。
「匠の眼」とは、センシング技術、モニタリング技術です。陸上で栽培される農作物と異なり、水産物は水中に生育するため容易に目視することはできません。そこで、養殖においては水中センサー、カメラを用いて、魚の状況や水質をモニタリングする技術が実用化されています。また、遠洋漁業や沖合漁業では、どこにターゲットとなる魚群があるかを把握しなければ効率的に漁獲することができません。近年は、従来のソナーによる魚群探知だけでなく、人工衛星のリモートセンシングデータの活用も進んでいます。
「匠の頭脳」はデータ分析やAIなど、漁業従事者のノウハウを補完する機能です。上述のモニタリングデータをベースに養殖の給餌量を最適化するシステム、人工衛星データをAIで分析して漁場予測情報を提供するシステムなどが実装されています。
「匠の手」は作業の自動化を意味します。漁業従事者が担ってきた作業を、機械やロボットを用いて自動化することで、水産業の喫緊の課題の1つである労働力不足を解消することを狙っています。
「匠の手」は作業者の安全配慮や作業精度の向上にも効果を発揮するため、導入シーンが増えています。IoTを用いた自動給餌器では、クラウドを活用して水中環境センサー、自発センサー、カメラなどのデータを集約・分析し、それをもとに遠隔操作で給餌しています。水中環境と摂餌実績を“見える化”して、給餌を最適化していることがポイントです。
Point
●IoT・AI・ロボティクスを活用した水産業のスマート化が進展
● 主眼は「水産業の収益性向上」と「適切な資源管理の実現」の2点
● スマート農業と同じく「匠の眼」「匠の頭脳」「匠の手」の3つに分類可能
(「図解よくわかるスマート水産業」p.48-49より抜粋)
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<書籍紹介>
書名:図解よくわかるスマート水産業 デジタル技術が切り拓く水産ビジネス
著者名:三輪泰史
判型:A5判
総頁数:168頁
税込み価格:2,420円
<目次>
第1章 日本の水産業の特徴
第2章 日本の水産業に迫る5つのリスク
第3章 水産物需要のトレンド
第4章 スマート水産業はビジネスになる
第5章 スマート水産業×海面漁業
第6章 スマート養殖業
第7章 地域の資源を活かしたサステナブル養殖
第8章 スマート水産業×加工・流通
第9章 付加価値を高めるバイオテクノロジー
第10章 台頭する藻類養殖
第11章 スマート水産業を加速させる最新トレンド