IHIが7割増、3年で5000億円投資の使い道
IHIは2023年度からの次期3カ年中期経営計画期間中に総額5000億円程度投資する方針を明らかにした。22年度までの現3カ年中計に比べ約7割増やす。脱炭素の柱に位置付ける燃料アンモニアやメタネーションなどの成長分野に積極投資する。ウクライナ危機を踏まえたエネルギー安全保障やクリーンエネルギー移行など国際情勢が大きく変化する中、投資を積み増し、持続的成長につなげる。
投資額は研究開発や設備投資、スタートアップへの出資、M&A(合併・買収)など投資全般の合計。燃料アンモニア、メタネーション、持続可能な航空燃料(SAF)などのカーボンソリューションをはじめ、航空輸送システム、保全・防災・減災など現中計の注力分野を一段と推進し、成長事業を創出する。「カーボンソリューションの実現には投資が必要。成長分野に集中的に投資する」(井手博社長)。
現中計では20年度に900億円程度、21年度に700億円程度投資した。22年度は1400億円程度を投資する計画で、3年間で総額3000億円弱になる見通し。外部環境の不透明感が増す中、キャッシュフローの改善を続けて現金創出力を高め、新中計の投資資金を確保する。
IHIは23年度に、燃料アンモニアをJERAの愛知県碧南市の石炭火力発電所に混焼する大規模実証を始める。これを足がかりにアジアなど海外でも石炭火力への混焼を目指すほか、製造から使用までのサプライチェーン(供給網)を構築する。これらの実現に必要な設備や研究開発に投資する。関連技術を持つスタートアップへの出資も狙う。
メタネーションは二酸化炭素(CO2)と水素からメタンを製造する技術で、工場や火力発電所の脱炭素の手段に期待される。IHIは顧客の工場などに設置する小型装置を手がける。製造能力を高めた大型装置を30年までに国内外で商用化する計画で、これらに投資するとみられる。
またESG(環境・社会・企業統治)経営の重要課題である人材投資やデジタル変革(DX)にも力を入れ、環境変化に強い事業体質を築く。