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ビジネスモデル転換する大和証券G本社、成否のカギ握る富裕層向けNISA提案

大和証券グループ本社は顧客の資産残高に応じた手数料収入を中心とした資産管理型ビジネスモデルへの転換を加速する。2023年度税制改正による少額投資非課税制度(NISA)の恒久化や累計投資上限の引き上げを受け、富裕層向けにNISAの提案に乗り出す。投資一任型の資産運用商品のファンドラップも主力に位置付けて提案を活発化する。ストック収入の比率を高め、市況の変動に左右されない強固な経営基盤をつくる。

政府が24年以降にNISAの年間投資枠を最大360万円、生涯投資枠を1800万円に増やす方針を受け、中田誠司社長は「資産形成層だけでなく全世代で利用できる制度になった」と評価。その上で「我々のボリュームゾーンの顧客がいかに利便性高い制度として利用できるかを考え、力を入れる」(中田社長)として富裕層への提案に乗り出す。

富裕層に対して「総資産を分析した上での包括的なコンサルティングで、NISAも一つの商品として提案する」(同)。他社の預かり資産も含めた顧客の総資産を分析して運用戦略の策定から投資実行まで支援するツールを導入し累計22兆円の分析実績がある。ツールの活用で税務や相続など顧客の資産全体に目配りしたコンサル活動を展開し、預かり資産を積み上げる考え。

資産管理型ビジネスモデルはファンドラップを中核に据える。同社のファンドラップは運用スタイルで最大737通りと業界一の品ぞろえがある。5月から提携先のゆうちょ銀行がファンドラップの販売を始めた。「差別化したブランドをしっかり作り上げ、ファンドラップの中ではトップシェアを取っていきたい」(同)としている。

4%賃上げ 不安取り除き士気向上

大和証券グループ本社は2023年度に4%の賃上げを実施する方針を明らかにした。基本給の底上げ(ベースアップ)や一時金などの内訳は未定で、今後詰める。足元の消費者物価指数の伸び率は3%台後半と高い水準にあり、「生活コストが上がっている分の賃上げはしなければならない」(中田誠司社長)とし、従業員の不安感を取り除き、士気を高める狙いがある。

 

対象は国内の従業員約1万3000人。大和証券グループ本社の4―9月期連結決算は、市況の悪化を受けてリテールと法人の両部門が落ち込み、経常利益が前年同期比54・2%減の329億円となった。ただリテール部門の残高ベース収益比率は51・6%と目標の50%を上回り、固定費をカバーできる収益体質となっているため、賃上げの余力がある。

 

人事関連の施策では中途採用にも力を入れ、例年40人程度のところ、22年度は200人の採用計画を立てている。「既存の社員との化学反応を起こし、多様性を力に変えていきたい」(同)としている。

 

大和証券グループ本社は有給の育児休職取得期間を4週間に延長するなど業界に先駆けた施策を講じており、社員の成長により企業価値向上を目指す。

日刊工業新聞 2022年12月23日

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