ホンダ系部品メーカーたちが重要拠点「北米」で狙う反転攻勢
ホンダと取引が多い部品メーカーが、北米事業の再構築に取り組んでいる。ホンダにとって北米は売上高の6割近くを占める重要拠点。特に2023年3月期は全面改良したスポーツ多目的車(SUV)「CR―V」投入などの大型案件を複数抱えている。しかし半導体不足などで主力車種の減産を余儀なくされ、部品メーカーもその影響を受けている。各社は省人化による生産性向上や拠点新設などの種まきを進め、反転攻勢に備える。(江上佑美子)
「収益面でようやく体質改善の効果が出てきた」。ジーテクトの高尾直宏社長は自社の北米事業についてこう語り、ひとまず安堵(あんど)の表情を浮かべる。22年7―9月期の北米事業の営業損益は3800万円の黒字(前年同期は8億1500万円の赤字)に回復した。
北米で人件費が高騰し労務費が重荷となる中、自動検査や無人での部品払い出しシステムを導入。「ロボットが人を補助するのではなく自ら作業する」(高尾社長)生産体制の構築を図る。
エフテックは23年4月、営業子会社を米ミシガン州に設ける。同社は23年3月期見込みで、全社売上高の60%がホンダ向け。今回の子会社新設で、取引先の多様化に弾みを付ける狙いだ。
同社は北米事業が22年3月期まで2期連続の営業赤字と苦戦。23年3月期の営業損益予想は16億円の黒字を見込んだが「顧客の減産影響が続く」(福田祐一社長)として、11月に15億円の赤字に下方修正した。
日本から溶接などの熟練者を派遣、自動化や工場レイアウト見直しによる省人化も進めている。足元の効果は限定的だが、福田社長は「生産が回復した段階で効果を発揮するため、改善活動に注力する」と前を見据える。
森六ホールディングスは北米事業の22年4―9月期の営業損益が14億円の赤字(前年同期は9億円の赤字)だった。ホンダなど完成車メーカーの生産計画変更に伴う稼働ロスや、人件費高騰が響いた。インストルメントパネル部品などを手がける子会社、森六テクノロジー(東京都港区)の森田和幸副社長は「組み立ての自動化などで製造体質を強化している。生産拠点の集約も進める」と話す。
ホンダにとって23年3月期は主力車種であるSUV「CR―V」、中型セダン「アコード」の全面改良や新型SUV「HR―V(日本ではZR―V)」投入、高級車ブランド「アキュラ」のスポーツモデル「インテグラ」復活などに取り組む勝負の年だった。しかし半導体不足で生産が滞り、11月には23年3月期の北米での販売台数見通しを、8月公表比13万5000台減の125万5000台に下方修正した。
ホンダは10月、米国オハイオ州の3工場をEV生産向けに改修する方針を示した。エイチワンの金田敦社長は「EV(生産台数)が純増になる訳ではない。今の枠組みの中でEV比率が上がる」と冷静にみて、ホンダ向け以外を含めて新規ビジネスの構築を強化する考えを示す。
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