過去最高の生産額見込む電子情報産業、業界が問われること
ITソリュ伸長で最高更新
電子情報産業が長期的に成長を続けられるか試されている。電子情報技術産業協会(JEITA)は15日、2023年の同産業の世界生産額が22年見込み比2・6%増の3兆5266億ドル(約476兆円)で過去最高を更新する見通しを発表した。ITソリューションの伸びなどが寄与する。一方で消費者の電子機器購買意欲の減退に伴い、半導体生産額が減少するとの予測もなされた。各事業者は扱う商材の活用事例の創出などで新市場を開拓していけるか、あらためて問われる。(阿部未沙子)
22年の電子情報産業における生産額見通しは、前年比0・6%増の3兆4368億ドル(約464兆円)。中でも、システム構築(SI)やハードウエア、ソフトウエアの保守などを含むソリューションサービスが好調だ。世界的なデジタル化の進展が背景にある。
同サービスの22年の世界生産額は、同8・7%増の1兆1907億ドル(約161兆円)となる見通し。次世代インターネット技術「ウェブ3・0」や、メタバース(仮想空間)などの浸透を想定し、23年も同8・3%の増加を見込む。 他方、今後の生産額減少を予想する分野の一つが半導体だ。22年の生産額は前年比で増え過去最高を更新する見込みだが、エネルギー価格の上昇などが電子機器の購買意欲低下につながる懸念を踏まえ、23年は同4・1%減の5566億ドル(約75兆円)と見通す。ただ海外生産分を含む日系企業の生産額は、自動車や流通などの分野でデジタル化が進むことに伴い、同2・3%増の6兆2989億円と堅調に推移する。
15日に都内で会見した時田隆仁JEITA会長(富士通社長)は「ソリューションサービスの需要が大きく伸びたことに伴い、電子機器の需要が伸びた」と、半導体の22年の生産額が過去最高を見込む背景を指摘。その上で「デジタル化の遅れもあり、日系企業の伸びは世界と比べ少し遅れて出てくるのではないか」と分析した。
電子情報産業を支える成長分野について、JEITAは多様なデジタル技術を組み合わせて社会課題を解決する「デジタルイノベーション」を挙げる。デジタルイノベーション市場の世界需要額は、30年に2兆3525億ドル(約318兆円)に達すると見積もった。
同市場には、ブロックチェーン(分散型台帳)や量子コンピューティング、メタバース技術などが含まれる。例えば量子コンピューティングでは制御回路や基盤ソフトウエア、冷凍機といった需要が見込め、幅広い事業者に波及する可能性は考えられる。
ただメタバースでは“なりすまし”への対策をはじめとするセキュリティー向上の必要性が指摘されているなど、新規の領域には課題も多い。JEITAはこうした新市場の形成のためには継続的な研究開発やユースケース(活用事例)創出以外にビジネス環境の整備やルール策定が必要だとしており、業界団体としての力もあらためて試されそうだ。
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