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人の仕事を置き換える、日本航空電子工業がロボット導入で得た効果

人の仕事を置き換える、日本航空電子工業がロボット導入で得た効果

ロボット「UR3」が部品の内側にグリースを塗る

日本航空電子工業は2013年、昭島事業所(東京都昭島市)の産業機器向けコネクターの組み立て工程に協働ロボットを導入した。製品の品質向上や人の働き方の変化などを効果として実感している。人の仕事をロボットに置き換えることの難しさを痛感しながら改良を重ね、さまざまな工程にロボットを取り入れてきた同社。将来的には、海外拠点にもロボットを展開する方針だ。

「ロボットを導入する前の準備段階で苦労した」―。コネクタ事業部生産技術部の谷口俊右主任は振り返る。ロボットを動かすにはプログラミングが必要で、人と協働する場合には人の動きも数値化しプログラムに組み込まなければならない。そこで人の動作を動画で撮影。コネクターを持ち上げる速度などを計測し、数値として見えるようにした。

ロボット「ネクステージ」が産業機器など向けの丸型コネクターを組み立てる

13年にカワダロボティクス製の人型協働ロボット「ネクステージ」を丸型コネクターの組み立てラインに導入した。シェル(外側のケース)にインシュレーター(絶縁体)を入れてコンタクト(端子)を差し込み、リングをはめるといった流れだ。

ネクステージ導入後も、ロボットができる工程、できない工程を見極めながら経験を積み、丸型コネクターより大型のコネクターにも対応できるようになった。16年には双腕ロボット、そして18年にユニバーサルロボットの「UR3」を生産工程に入れ、コネクターの組み立て・検査工程などを担っている。

自動化に難航した工程の一つがグリースの塗布だ。塗布量などは人の感覚や経験に基づいていたが、数値化やロボットの特性を考慮した結果、部品の内側にグリースを塗る工程をUR3に任せられるようになった。

ロボットの導入により、品質や生産量の向上、投資削減の効果が得られた。手で組み立てる場合に比べ、ある品目での不良率が半分程度に減ったほか、1日当たりの生産量が2倍になった品目もある。「部材の投入は人が担当するなど、ロボットとすみ分けることで投資効果が得られている」と、コネクタ事業部生産技術部の野口英之部長は話す。

全自動化設備の導入と比べて設備投資にかかる費用も抑えた。コネクターを運ぶトレーの搬送ラインをなくし費用を削減。コネクターの導通検査や気密検査を担うロボットが空になったトレーを持ち上げて移動させる仕組みで、トレーの循環も自動化した。

人の仕事をロボットに置き換えたことで人員を単純な工程や危険な作業から、設備維持のためのメンテナンスへ移行することに成功した。また、プログラム通りに動くロボットに仕事を任せることでミスが発見しやすくなった。これにより従業員間で課題の共有ができ、改善意識も高まった。

今後も引き続き、ロボット活用で人為的なミスを減らすほか、効率的な生産を実現していく。将来は省人化の要望に応えて、米国や中国などの海外拠点にも自動化設備を導入する考えだ。


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日刊工業新聞 2022年10月4日

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