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スペースXに投資したアステリア、主力事業との相乗効果は?

アステリアは主力のソフトウエア事業の成長を促進するコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)ファンド「アステリア・ビジョン・ファンド(AVF)」を通じて、米民間ロケット会社のスペースX(カリフォルニア州)に約2億3000万円を出資した。スペースXが進める分散型の衛星通信インターネット「スターリンク」構想の成長性に着目し、5社目の投資先とした。AVF全体の運用益が大きく伸長する中、2022年度以降も毎年数社に投資する方針だ。

投資事業の中核となるAVFではソフトウエア事業とのシナジーを見据え、デザインやディセントラライズド(非中央集権)などの四つのテーマに沿って投資先を選定している。既存の投資先である4社のうち2社は評価額が上振れとなり、21年4―12月期には約7億円の評価益を計上し、全社の収益を押し上げた。22年3月期は主力のソフトウエア事業と投資事業が全体をけん引する中で営業利益が前期比4・1倍の34億円と、過去最高を見込む。

今回出資したスペースXは非上場ながらも投資の前提となる時価総額が推定7兆円とされる。AVFの投資先は台湾ゴリラ・テクノロジー・グループ(十数億円の出資)が最も大きいが、事業規模ではスペースXが桁違いに大きい。また、衛星データの民間活用など衛星を介した宇宙ビジネスへの期待も国内外で広がっている。

スペースXへの出資は1月末に完了。「国際会計基準(IFRS)に従って1年後に損益を評価し、22年度以降の決算に反映する」(平野洋一郎アステリア社長)。

スターリンクは低軌道の人工衛星を使った通信サービスの商用化を目指して、欧米を中心に世界12カ国で試用版による実証を進めている。衛星の打ち上げなどもすべて完了し、商用化すれば地球上どこでも高速インターネットが利用できる。

日本でのサービス展開は未定だが、実用化すれば山間部や離島などでも高速通信が可能になる。アステリアはエッジコンピューティング用ミドルウエア(基盤ソフト)「グラヴィオ」やモバイルアプリ作成ツール「プラティオ」との連携を見据え、「3年後くらいには日本でも商用化されていることを期待したい」(平野社長)という。

日刊工業新聞2022年2月24日

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