マイクロンが量産開始、世界最先端のDRAMメモリー半導体の性能
米マイクロンテクノロジーは、世界最先端のDRAMメモリー半導体の量産を始めた。足元のDRAM市況は需要が減少し、メーカー各社が減産する調整局面が続いている。マイクロンの最先端DRAM「1β(ベータ)」は毎秒8・5ギガビット(ギガは10億)の高速データ転送が可能。中長期で成長が見込める自動運転車やデータセンター(DC)などの需要に向けて製品群を拡充し、次の成長局面に備える考えだ。
マイクロンが「1β」の第1弾製品として投入する「LPDDR5X」は、記憶容量が16ギガビット。2021年に量産を始めた従来品より、電力効率を15%、記憶密度を35%向上しており、低コスト化も実現できる。
16日に広島工場(広島県東広島市)で量産開始のセレモニーを開催。同日会見したマイクロンのサンジェイ・メロートラ社長兼最高経営責任者(CEO)は、足元のメモリー市況の厳しさを認めつつも「メモリーはパソコンやスマートフォンだけでなくDCや車載、産業向けなど複数の市場にまたがり、特にDCや車載は成長が早い」と中長期の成長性を強調。「1β」の技術を生かしてさまざまな市場に対応した製品を拡充する考えを示した。
広島工場は、13年にマイクロンが買収した旧エルピーダメモリの工場で、「1β」の開発も担った。「1β」の開発には3年間に毎年10億ドル規模の投資を行い、韓サムスン電子などが採用している先端の露光技術「極端紫外線(EUV)」を使わず、成熟した「ArF液浸」の技術を用いて開発に成功した。量産には国も最大約465億円を助成する。
メロートラ社長兼CEOは「今後、世界で10年間に1500億ドルを最先端の研究開発と製造に投資する。13年以降も日本で130億ドルを投資してきた。広島は当社にとって重要で、今後も投資を続ける」と述べ、継続的な投資の姿勢を示した。
経済安全保障上の観点からも米国と日本は対中国を念頭に置いた有志国によるサプライチェーン(供給網)構築を重視している。セレモニーに参加したラーム・エマニュエル駐日米国大使も「(マイクロンの量産決定は)世界の半導体と製造業にとって画期的だ。米国と日本の通商外交と両国の経済、サプライチェーンの一層の統合を強調するものだ」と、日米が連携する供給網強化の取り組みを歓迎した。
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