ホンダが実用化へ、独自AI活用「超小型モビリティー」の機能
ホンダは2日、研究開発子会社の本田技術研究所が人工知能(AI)を活用した超小型モビリティーの実証実験を茨城県常総市内で始めたと発表した。超小型モビリティーの市場拡大が見込まれる中、ホンダは独自開発した協調型AI「ホンダCI」を組み合わせることで、安全で快適な移動の実現に寄与する考えだ。2030年ごろの実用化を目指す。(江上佑美子)
「高齢化で移動に不安を感じる人などが増える中、新しい技術が必要となっている」。本田技研の大津啓司社長は取り組みの背景をこう説明する。
実証実験では2種類の超小型モビリティーを用いる。搭乗型の「CiKoMa(サイコマ)」は自動で動き、乗員がジョイスティックなどで行きたい方向を示すとそれに従う。言葉やジェスチャーで呼び 寄せ、自由に乗り降りできる機能も搭載した。
追従型ロボット「WaPOCHI(ワポチ)」はユーザーの特徴を服装などで認識、その後ろについて移動し、荷物などを運ぶ。「乗り物ではなくユーザーの『歩きたい』気持ちを支援する」(本田技研先進技術研究所エグゼクティブチーフエンジニアの安井裕司氏)モビリティーだ。
サイコマとワポチには、ホンダCIに関連した二つのコア技術を用いている。一つはカメラで得た画像情報を基に周辺状況を分析して進む自動走行だ。
一般的に自動運転で使われている高精度3次元地図データ(HDマップ)や高性能センサーに頼らず、カメラで把握した道路構造や歩行者などの情報を元に経路や速度を決める。コストを抑えるとともに、区画線がない公園などでも使いやすくする狙いだ。
もう一つがコミュニケーション技術だ。自ら判断し、ユーザーと「車の近くに止まって」「危ないのでポストの近くに止まります」といった会話をして安全な移動につなげる。
超小型モビリティーの存在感は高まっている。ボストンコンサルティンググループによると、超小型モビリティーの今後10年間の年平均成長率は30%を超える見込みだ。一般的な4輪車と比べ環境負荷が小さく、ラストワンマイル(目的地までの最終区間)を担う手段としても期待されている。
一方で課題となるのが安全性の確保だ。日本自動車工業会(自工会)二輪車委員会の日高祥博委員長(ヤマハ発動機社長)は個人的な意見だとした上で「キックスケーターなどの超小型モビリティーが増えている中、問題が起きている。枠組みを広げ、秩序作りに貢献できることがあるかもしれない」と話す。
ホンダの実証実験には常総市の市職員らも参加し、まちづくりに反映する方針だ。新たなモビリティーの浸透に向けては、技術と社会受容性の両方を構築する必要がある。