売上高1兆円を達成、パーソルHDが描く成長路線
パーソルホールディングス(HD)は、SBU(戦略事業単位)体制を軸に成長路線を描いている。人材派遣や人材紹介など事業内容ごとに複数社をくくったSBUをHD下に五つ配置。SBU長には小規模のM&A(合併・買収)や人事権などSBU内の経営判断の権限を委譲している。意思決定を迅速化し、グループ全体の市場競争力を高めている。
同社は祖業のテンプスタッフ(現パーソルテンプスタッフ)を中心に、転職サービス「doda」を運営するインテリジェンスグループ(現パーソルキャリアなど)といった多くの会社をM&Aで吸収し成長してきた。グループの一体経営に価値を置きHD体制にしたが、一部のセグメントは売上高が年間3000億円を超えるなど規模が拡大。変化や動きの激しい人材サービス業界に対応するため、2020年4月にSBU体制へ移行し、意思決定を迅速化した。
約2年半でSBU間のシナジーも生まれた。「派遣も紹介も活用したい」など複合的なニーズを持つ顧客には、HDのグループ営業本部が各SBUと連携し共同提案。新規事業を創るソリューションSBUでは、一定規模に成長した事業を法人化し最適なSBUに配置し直すこともある。
一方で、徳永順二執行役員兼CFO(最高財務責任者)は「多角化の成功にはとがった領域を持つことが大事」と分析する。原則、SBU長は中核会社の社長が兼務。事業に精通したSBU長の経営判断が個性を伸ばす。
SBU体制は後継者育成の側面も持つ。SBU長に最終決定の責任と経験を積ませて、グループ内の経営人材に育てる。今後は経営層の異動を活発化する仕組みも整備予定だ。
22年3月期に計画の1年前倒しで売上高1兆円を達成した。同社が目指すのは仕事を通して成長を実感できる「はたらいて、笑おう。」の世界。和田孝雄社長兼CEO(最高経営責任者)は「一人ひとりの希望に沿うキャリアの選択肢を提供したい」としている。