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東京・丸の内に新オープン、三菱・2代目当主の思いを形にする美術館の全容

東京・丸の内に新オープン、三菱・2代目当主の思いを形にする美術館の全容

国宝「曜変天目(稲葉天目)」(南宋時代〈12-13世紀〉 静嘉堂文庫美術館蔵)12月18日まで開催の「響きあう名宝-曜変・琳派のかがやき―」展より

静嘉堂文庫美術館が10月1日、「静嘉堂@丸の内」として東京・丸の内に新オープンする。静嘉堂文庫は現在の東京・世田谷に残し、展示ギャラリーを重要文化財の「明治生命館(旧三菱二号館)」1階に移す。丸の内にミュージアム構想を描いた三菱の2代目当主・岩崎弥之助の思いを形にする美術館となる。

静嘉堂文庫は1892年(明25)、東京・駿河台の弥之助邸内に創られた。その後、1924年に息子の小弥太が世田谷に現在の文庫を建て、40年に財団法人を設立。小弥太の没後、父子2代のコレクションが財団に寄贈された。77年に文庫隣の展示館で美術品の公開を始め、創設100周年となる92年、文庫に併設する形で静嘉堂文庫美術館が完成した。

創設130周年を迎える2022年、丸の内に新たな美術館を設ける。同館は和漢の古典籍約20万冊、東洋の古美術品約6500件の収蔵品を誇る。学芸部長の小池富雄氏は「名建築のロビーに美術館を埋め込み、美しく鑑賞してもらえる空間ができあがった」と胸を躍らせる。目と鼻の先にある三菱一号館美術館との連携もファンの期待が大きい。

1934年(昭9)竣工の重要文化財「明治生命館」

開館記念展「響きあう名宝―曜変・琳派のかがやき―」では、前期と後期に分け、陶磁器の至宝「曜変天目」や「源氏物語関屋澪標図屏風」などの国宝全7件を一挙に公開。弥之助が購入した最初の茶道具とされ、信長、秀吉、家康の“三英傑”の手中にあった大名物の茶入も披露する。

三菱グループの礎を築いた弥之助は当時、国内の美術品が海外へ売却されていくのを憂い、「東洋のものは東洋へ留めん」として絵画から彫刻、書跡、工芸まで幅広く集めた。「企業の使命として日本の文化財を守りたいとの気持ちが強く、それを最先端の美意識で収集した」と小池氏。東洋の美術をこよなく愛した父子による“正統派”コレクションだ。

【メモ】(10月1日移転オープン)▽開館時間=(通常)10―17時▽休館日=月曜日など▽入館料=一般1500円▽最寄り駅=東京メトロ千代田線「二重橋前駅」▽住所=東京都千代田区丸の内2の1の1明治生命館1階▽電話番号=050・5541・8600

(「コンテンポラリーアートの風」「私の執務室」「ミュージアム探訪」「産業博物館を訪ねる」を週替わりで掲載します)

日刊工業新聞2022年9月23日
藤木信穂
藤木信穂 Fujiki Shiho 編集局第二産業部 記者
三菱グループは静嘉堂文庫美術館のほかに、三菱一号館美術館、東洋文庫ミュージアムの三つの美術館を保有する。いずれも岩崎家ゆかりの文化遺産だが、静嘉堂は丸の内に思い入れのあった弥之助自らが創設した美術館だ。これまで閑静で緑豊かな世田谷の地でコアな美術ファンを獲得してきたが、今後は日本一のビジネス街に躍り出る。ビジネスパーソンなど新たな層を取り込み、近隣の美術館とも連携して丸の内のアートシーンを盛り上げてくれるだろう。

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