モノを繰り返し握って持ち方を最適化する「触覚ハンド」技術の仕組み
早稲田大学の船橋賢次席研究員と尾形哲也教授らは、触覚ハンドで物を繰り返し握って、深層学習(ディープラーニング)により物の持ち方を最適化する技術を開発した。4本指のハンドに384個のセンサーを配置し、触覚だけで1152次元の情報となる。人工知能(AI)が物に合わせた握り方を獲得する。
紙管容器やプラスチックチューブなどを触覚ハンドに持たせて握り方を深層学習で最適化する。4指ハンドの関節角や指や手のひらのセンサー情報、握る物についての重いや硬い、滑りやすいといった情報を含めて1174次元の情報を入力し、各指の関節角の16次元の情報を出力する。
センサー情報は毎秒100回計測される。深層学習すると物の形状に合わせて握り方を変えるようになった。学習モデルを分析すると、薬指と人さし指、手のひらの情報は特徴量が近く、中指と親指のように対向する指の特徴量は大きく変わっていた。対向指は把持を安定化させる。
指の本数など多肢ハンドの形状によって最適な握り方は変わるが、どの指を使って握り方を安定させるかAIの戦略を読み解ける。効率的な学習法が分かると他のハンドにも展開しやすい。学習済みのモデルは、未知の物体を握ったときの成功率は74%だった。
物を握る動作は人が道具を使う上で最も基本となる動作の一つ。だが多点での接触や摩擦のシミュレーションが難しく、シミュレーションから実機への移行に課題があった。今後、作業に合わせた物の握り方を深層学習に獲得させる。
日刊工業新聞2022年9月26日