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関西「空の玄関」拡充、関空発着回数3割増の思惑

関西「空の玄関」拡充、関空発着回数3割増の思惑

30年をめどに国際線の定期便を就航させる神戸空港

2025年の大阪・関西万博の開催と開催後を見据えてインバウンド(訪日外国人)需要の取り込みへ―。関西、伊丹、神戸の3空港の役割を官民で話し合う組織の関西3空港懇談会(松本正義座長=関西経済連合会会長)は、関西空港の発着回数拡大と神戸空港の国際化で合意した。関西空港の発着回数を従来比3割増の年間30万回とし、2030年代前半めどに実現を目指す。神戸空港では30年ごろをめどに国際線の定期便を就航させる。ただ神戸空港の施設や交通アクセス拡充など課題がある。(大阪・市川哲寛)

松本座長は「オール関西で持てるものを活用し、関西経済を活性化させる」と力を込める。関西空港の発着回数の規模は成田空港と同水準となり、日本の空の玄関としての役割は高まる。

東南アジアを中心にインバウンド需要増が見込め、3空港を運営する関西エアポート(大阪府泉佐野市)は25年度の関西空港の発着回数が19年度比約2割強増の24万3000回、30年度に同約5割増の29万7000回に増えると試算している。

大阪府の吉村洋文知事は「関西空港ファーストの考えの中で関西空港を強くすることが関西全体の成長につながる」とし、3空港で唯一24時間運用の関西空港を中心にインバウンド需要増への対応を図る方針。

一方で大きな自然災害が増える中、2空港での国際線対応は災害リスクを分散できる。関西空港は18年に台風被害で利用停止になったことがあるだけに、神戸空港と双方で補完できれば関西地域として機能維持を図れる。

りそな総合研究所の荒木秀之主席研究員は「(暦年の)30年、40年を見据えると関西空港の発着枠が需要に追い付かなくなる。関西空港に集中するとインフラがいびつになる」とし、神戸空港の国際化を歓迎する考え。荒木研究員は「インバウンドの行動の多様化で穴場の観光地が求められる中、兵庫はポテンシャルがある」とし、地元活性化にもつながることを説明する。

神戸空港は国際定期便の発着回数上限を1日40回とする。ただ定期便就航に先立ち、万博開催時には不定期の国際チャーター便の運用を可能としており、早期の課題解決が求められる。

ターミナルに出入国管理や検疫、税関などの施設を設ける必要がある。また交通アクセスは神戸市中心部と神戸空港を結ぶ自動無人運転の新交通システム「ポートライナー」や、それ以外の交通手段も含めて増強が求められる。神戸市は国土交通省と新たな道路計画などで協議している。財政負担などをめぐる問題が出る可能性もある中で実行力が問われる。

日刊工業新聞2022年9月26日

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