パナソニックHDが追従型ロボット「ピーモ」で創造する観光サービスの未来図
パナソニックホールディングス(HD)が自社の追従型ロボティックモビリティー(電動車いす)を用いた観光サービスの創造に力を注いでいる。現実世界と仮想世界を融合するXR技術も活用した実証実験で「5人程度のグループ移動」「観光向けツアーライド」に商機があると判断。法人向けに提案してサービス事例を増やし、2025年の大阪・関西万博などで回復が期待されるインバウンド(訪日外国人)需要に対応する。(大阪・大原佑美子)
パナHD傘下のパナソニックプロダクションエンジニアリング(PPE、大阪府門真市)は20年11月、追従型ロボ「PiiMo(ピーモ)」を発売した。ピーモは関係者が操作する先頭のロボに後続のロボが自動追従し、安全かつ効率的にグループ移動を支援する。足元のLiDAR(ライダー)で対象物との距離を測り、列に人が割り込んでも安全に止まれるのが特徴だ。
空港などで効率的な移動を支援する用途を想定したものの「付加価値を生まない」(石川武志新規事業センターロボティクス事業推進部部長)と考え、21年に施設や観光地のツアーライド、搭乗時にXRコンテンツも楽しめるパッケージを相次ぎ投入して有料実証を重ねた。体験者からは「両手が空いて写真が撮れる」「ツアーの説明に集中できた」と好評だったという。
また「事業者と対話しながら(サービスを)一緒に作りたい」(同)とし、9月に旅行代理店やイベント企画会社など約70人を対象に試乗会を実施した。各エリアでXRコンテンツが体験できるタブレット端末を前面に配置したピーモ3台を追従させ、松下幸之助歴史館(大阪府門真市)をガイド付きで案内。実際には1階部分のみを展示している「創業の家」の2階部分を画像処理技術で再現するなど、工夫を凝らして提案。サービス拡販に向けた知見を積み上げる方針だ。
政府は30年にインバウンドを19年比約2倍の6000万人にする目標を掲げている。そうした中、PPEの石川部長は観光サービス供給事業者の構造が変化する可能性を指摘。「デジタル変革(DX)が強みの“観光テック”が台頭し、連合が発生する。我々もここに入っていく」と意気込む。技術の社会実装を進めて存在感を高められるか試される。
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