登録申請受付始まる「インボイス制度」、事業者の利点と負担
2023年10月に導入されるインボイス制度(適格請求書等保存方式)の事業者登録の申請受付が10月に始まる。インボイス制度は複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式。インボイス制度の導入に伴い、中小事業者の事務負担増を懸念する声もあるが、適格請求書を電子化した「電子インボイス」の導入は、事業者の業務効率化につながるといった利点もある。(編集委員・川瀬治)
適格請求書は、売り手が買い手に対して正確な適用税率や消費税などを伝えるための登録番号のほか、一定の事項が記載された請求書や納品書。売り手は買い手から適格請求書の交付を求められた場合、交付が義務付けられる。適格請求書を交付できるのは、登録事業者に限られている。10月から事業者の登録申請の受付がスタート。23年10月から登録を受けるためには同年3月31日までに登録申請を行う必要がある。
インボイス制度の導入に伴い、期待されるのが電子インボイスの普及だ。20年に会計ソフトベンダーなどが「電子インボイス推進協議会」を設立し、電子インボイスの普及に努めている。政府は22年秋をめどに電子インボイスの日本標準仕様の運用開始を目指す。標準仕様は国際規格「Peppol(ペポル)」に準拠して策定する方針だ。ペポルは中小・小規模事業者から大企業まで幅広く、低コストで利用できるのが特徴。国税庁は「電子インボイスの導入で事業者の業務の効率化や事務負担の軽減が期待できる」としている。
しかし、インボイス制度の認知度は低いのが現状だ。インフォマートが実施した調査によると、インボイス制度について「よくわからない」と回答したのが55・3%。具体的なシステム対策などを検討しているとした回答は10・3%で、約9割がインボイス制度に未対応の状況だ。国税庁は6月からオンライン説明会を開催し、最近では週2回程度開くなど、制度の周知に取り組む。
インボイス制度の導入をめぐっては、コロナ禍で中小事業者に負担がかかるという声もあり、環境整備が重要。中小事業者の財務・会計業務のデジタル化は生産性向上のために欠かせないだけに、インボイス制度導入を控え、電子インボイスの推進など、中小のデジタル化を後押しする施策を充実させることが大事だ。